デート代論争は経済問題
「性的魅力」に頼ったビジネスも

 こういう日本の「デート代は男性がおごるべき」論争の経緯をながめてみると、ここに影響を及ぼすのが「意識」ではなく「カネ」であることがよくわかる。

 日本人はバブル期に比べて明らかに貧しくなった。その貧しさのあおりを受けている若い男性からすれば、「デート代をおごらせられる」なんてこんな理不尽な話はない。だから、深田さんらの主張にカチンときた。

 つまり、今回の炎上の根本にあるのは、ジェンダー平等の意識などではなく、「日本経済」の問題なのだ。

 実際、経済的余裕のある男性ならば、デート代はおごるし、プレゼントも貢ぐし、キャバクラにも通う。そして、結婚をすれば専業主婦として養う。しかし、経済的余裕のない男性にはそれができない。「安いニッポン」という経済の構造的な問題のせいで、朝から晩まで必死に働いても生活をしていくのがやっとで、「女性におごりたくてもおごれない」という若い男性もかなりいるはずなのだ。

 このように「デート代は男が払うべし」が叩かれる根本的な原因が、「日本経済」にあるとしたら今後、事態はさらに深刻になっていくはずだ。

 日本は諸外国のように最低賃金の引き上げもしないし、年功序列というシステムも根本的な見直しをしない。つまり、このままでは今後も貧しい若い男性は増えていくということだ。

 そうなると、「デート代は男が払うべき」と思っている女性はどうするのか。当然、貧しい日本の男性よりも金払いのいい男性のところへ向かうだろう。例えば、経済発展著しい中国人男性などだ。中国では、結婚できない男性が数億人レベルでいて、日本人女性も人気が高いという。

「日本の女性をバカにするな」というお叱りもあるだろうが、日本の男性もかつてそういう経済格差のある女性たちと関係を持った。結婚できない日本の男性とマッチングするため、フィリピンや南米の外国人女性がたくさん来日した。彼女たちの多くは、結婚や交際で得た金を、祖国に仕送りしていた。日本がさらに貧しくなれば当然、同じことをする日本人女性は増えるはずだ。

 こういう厳しい現実を踏まえれば、「男性にはやっぱりおごってもらいたい」という日本人女性たちが、「割り勘デート」に嫌気がさして、続々と海を渡る日も遠くないかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)