そして、さらに驚いたのは、運動を最後まで続けた男女74人中、34人の平均減量幅がゼロだった点である。彼らには「非レスポンダー」というラベルが貼られた。この気の毒な人々は必死に運動をし、1日の消費カロリーを少し増やすことができたのに、体重は減らなかったのである。
もう1つ重要なのは、運動すると食べる量が増える点だ。脳は空腹レベルを見事に調整している。その結果、私たちはカロリー消費が増えると、それをまかなうために摂取量を増やす。これについてみていこう。
カロリーの消費量と
摂取量の密接な関係
カロリー消費を増やしても体重の増加を防ぐことはできない。直感的には受け入れがたいが、これは事実である。そして、そうなるのは、カロリーの摂取と消費が密接に連携しているからだ。
1日のカロリー消費量は人によって大きく異なり、体重と体脂肪率で補正してもばらつきは大きい。多い人もいれば、少ない人もいる(体重、年齢、ライフスタイルが同じでも、1日の消費量が500キロカロリー違ったりする)。
1日のカロリー消費量が全体的に多い集団もときおり見られる(たとえば、サンプル数は少ないものの、シュアール族の男性は1日のカロリー消費量が多かった)。しかし、代謝が速いことと、体が細いことには何の関係もない。
肥満の人は、体重と体組成で補正すると、細い人と同じだけのカロリーを燃やしている(体重の補正をしなければ、肥満の人は体が大きいので毎日、細い人より多くのカロリーを燃やしていることになる)。
また、1日のエネルギー消費量の多さ、少なさから、今後体重が増えるかどうかを予想することはできない。
たとえば、ナイジェリアとアメリカの女性を対象にしたエイミー・ルークの研究によると、1日のカロリー消費量と体重の増加との間には、2年間、何の関係も見られなかった。子どもを対象にした研究でも同じ結果が出ている。カロリー消費量の多い人が体重が軽いのではない。カロリー消費量の多い人は、よく食べるのだ。
痩せるために本当に必要なこと
体重を管理し代謝をうまく機能させるには、栄養価が高く、満腹感が得られ、しかもカロリーの高くない食品を中心にした食事をとるのがいいだろう。ありがたいことに、適度なカロリーで食べ応えのある食事がどのようなものかはすでにわかっている。