1995年にシドニー大学のスーザン・ホルトが、38種類の食品を用意し、240キロカロリー分を食べて2時間後に満腹感があるかどうかを比較する基礎的研究を行った。

 満腹感が十分だったのは、果実、魚、ステーキ、ジャガイモのような手を加えていない食品だった。精白パン、箱入りシリアル、味つきヨーグルトのような加工食品は満足度が低く、とくに低かったのがクッキー、ケーキ、クロワッサンのようなオーブンで焼いたおやつ類だ。

 ポイントは、タンパク質、食物繊維、エネルギー密度である。食物繊維とタンパク質を多く含み、一口当たりのカロリーが少ないものが最も腹持ちがよかった。

 当然、おいしさも関係した。おいしさを高く評価された食品――つまり報酬系が大きく反応した食品――は、満腹感が最も得にくかった。ホルトの満腹感に関する研究は、ダイエット戦争を終わらせるための解決策を示している。それにはこの戦争を戦ってきたどの兵士も喜んで耳を傾けるだろう。

 ダイエットは、低炭水化物ダイエットにせよ、低脂肪ダイエットにせよ、満腹感の得られない食品を断ち、少ないカロリーで腹持ちのよい食品をとり入れたものが効果を上げる。低炭水化物ダイエット支持者の、糖類の多い食品はつい食べ過ぎてしまうという指摘は正しい。そうした食品は報酬系を刺激するが、満腹感は与えてくれない。砂糖入り飲料(ソーダやスポーツドリンク)、フルーツジュース、炭水化物を多く含む加工食品は危険である。果物や野菜が食欲を満たすのは食物繊維のおかげだが、これらの食品にはそれがまったく含まれていないからだ。

 だが、脂肪が豊富な食品、とくにタンパク質が含まれていない加工食品も、同じ問題をかかえている。低炭水化物ダイエットが肉やタンパク質の多い食品を重視するのはこのためである。

 こうすればカロリーを抑え、満腹感を得ることができる。植物性食品を基本とする混食は食物繊維が豊富で、タンパク質をしっかりとるようにすることもでき、カロリーは低いが、満腹感が続く。あなたに最適の食事法は、あなたの報酬系がどうはたらくか、そして、どんな食品の組み合わせが少ないカロリーであなたを満足させられるかによって決まる。

 名前のついたダイエット法をとり入れなくても、ひもじい思いをせずにカロリー摂取量を減らすことは可能だ。高カロリーの加工食品を家と職場の机から一掃し、タンパク質か食物繊維が多く含まれている食物(素炒りのナッツ、果物、新鮮な野菜など)をとり入れると、少ないカロリー摂取量で満腹感を持続させることができる。自分で料理する回数を増やすのもよいだろう。ほとんどのレストランは、すぐに食べ過ぎてしまうおいしい食事をつくるのが仕事だからだ。