交通費や市販薬の支払い分はマイナポータルとは
別に明細書を作って反映させる必要がある
マイナポータルは、マイナンバー(個人番号)を活用し、行政手続きを行うことを目的としたオンライン窓口だ。ここで管理している個人情報を、確定申告などに活用できるようにしたものが、2020年分の申告からスタートした「マイナポータル連携」だ。
国税庁ホームページで事前設定を行うと、確定申告に必要な控除証明書などのデータをマイナポータルから一括取得できる。入手したデータは、「確定申告等作成コーナー」のサイトで、申告書の該当項目に自動入力されるようになっている。
公的な医療保険(健康保険)で受けた医療費の情報は、2021年9月分からマイナポータル連携の対象となったため、昨年の申告では9~12月分しか自動入力できなかった。だが、今年申告する2022年分からは、1月~12月の1年分の医療費のデータの入手が可能になった。
また、医療費控除は申告者のものだけではなく、生計同一の家族のものならまとめて申告できる。たとえば、大学進学のために一人暮らしをしている子どもなど、離れて暮らしていても仕送りしていれば対象になる。
代理人の手続きをしておけば、配偶者や子どもなど、家族の情報も取得できるので、マイナポータル連携の自動入力機能を利用すれば、申告書作成の手間を軽減できるというわけだ。
ただし、マイナポータル連携で取得できる医療費情報は、公的な医療保険に関するものだけだ。医療費控除の対象になっている全ての医療費をカバーしているわけではない。そのため、より多くの税金を取り戻すためには、もうひと手間必要だ。
医療費控除は、使った医療費に見合った控除を収入から差し引くことで、課税所得を引き下げ、その結果、納税額が少なくなるという仕組みだ。控除額が多いほど、確定申告で取り戻せるお金も多くなるので、控除対象として認められているものは、余すことなく計上することが節税のカギになる。
医療費控除の対象は、公的な医療保険の自己負担分のほか、次のようなものが認められている。
・医療機関に行くための公共交通機関の交通費
・ドラッグストアで購入した市販薬
・健康保険の対象にならない不妊治療や人工授精の費用
・レーシックの手術代
・医師の指示で行ったはり・きゅう治療
・介護で使った紙おむつ代
医療機関に支払ったものでも、予防や美容目的のものは認められないが、原則的に「治療のための費用」「医師の指示で使った費用」は認められている。
マイナポータル連携の自動入力分だけで医療費控除をしてしまうと、せっかくの控除額に漏れが生じて損する可能性もある。公的な医療保険の自己負担分以外にも、「病院までの交通費がかかった」「市販薬を購入した」という人は、その分の医療費については明細書を作って控除に加えよう。
自分で明細書を作る場合も、国税庁のホームページにある「医療費集計フォーム」を利用すれば、「確定申告書等作成コーナー」の医療費控除の画面で読み込んで、申告書に反映させることができる。領収書やレシートを見ながら、自分で入力しなければならないので、少々手間はかかるが、その分、戻る税金も多くなる。
入力作業が面倒でなければ、マイナポータル連携は使わずに、医療費集計フォームに全ての医療費を入力して、申告書に反映させる方法でもよい。
マイナポータル連携は便利な機能ではあるが、これだけで完結できるわけではない。より多くのお金を取り戻すためには、控除額に漏れがないように、医療費として認められているものは全て計上するようにしよう。原材料費や物流費の高騰で生活コスト全般が値上がりしている今、払い過ぎた税金は確定申告でしっかり取り戻して生活防衛に役立てたい。