90年代のデフレ経済期には
大手チェーンが本格参入

 そのため平成に入り、昭和のモーニングは一時期下火になるのですが、それはこのような事情です。新興のコーヒーチェーンはコーヒー1杯が250円程度と安いこともあり、朝食になるホットサンドなどのメニューはそのまま追加かないしは400円台からのセット割という、これまでとちょっと違う価格体系が広まったのです。

 私も90年代に入り、年齢が30歳になる頃には朝食はスタバでとるようになったのですが、考えてみればカフェラテとスクランブルエッグマフィンで800円程度と、20代の頃のモーニングよりかなり割高になり、でもそれが当たり前の生活になってきていました。

 ただその頃から、日本経済も格差社会に入ります。いわゆる氷河期世代が増え、90年代後半からはデフレ経済が始まります。ファミレスやファーストフードで、300円程度の格安朝食セットが提供されるようになります。モーニングはこの時代以降、大企業チェーンによる大量仕入れ、大量生産による規模ビジネスへと事業特性を変えたのです。

 昭和の時代に名古屋で生まれ育った私の独自の視点による解釈になりますが、2000年代に入って東京出店を拡大したコメダ珈琲のモーニングが話題になった理由は、ファミレスやファーストフードの大量生産型格安モーニングと、スタバのちょっとお高めの朝食サービスのどちらでもなかったものを、若い世代が再発見したからだと思うのです。

 昔ながらのおいしいコーヒーに、サービスでついてくるボリュームのあるモーニング。昭和の世代にとっては懐かしくも当たり前のコメダのサービスが、Z世代から見ればとても目新しく、かつすてきに思える。それでコメダ珈琲が東京でもブームになったのだと私は考えています。