「自分の言いたいことをうまく言葉にできない」と思うことはないだろうか。その理由は「実は、自分のことがよくわかっていない」「自分の思いがつかめていない」からかもしれない。自分の生き方に迷う人にぜひ読んでほしいのが、2023年2月15日発売になった『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(坂本和加著)だ。「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」など数々の名コピー、ネーミングを生み出している坂本氏。本書では、坂本氏が20年以上のキャリアで身につけた、「言葉化」ための思考法、技術を余すところなく紹介。言葉にする技術だけでなく、自分の考えを深められる本書。今回は本書の発売を記念して特別に一部内容を再編集、抜粋して紹介する。
自分の「好き」を徹底的に掘り下げる
好きを仕事に、という考え方が一時期とても流行りました。
けれども、10代の子どもたちには、実は「しんどく聞こえている」。
それは、「好きを仕事に」を言葉のまま受け取って行動に移してもうまくいかないことを、子どもなりにわかっているからのように思います。
ケーキが好きだからケーキ屋に、というまっすぐな気持ちも大切ですが、なんとなく好きなだけでは結局モチベーションが長続きしないのと同じです。
これは、「好き」をしっかり見つめていないから起きていることです。
「ほんとうの好き」がわかれば、「どうなりたいか」もスムーズにわかる
「好き」を課題にして、しっかり掘り下げること。
掘り下げれば、ケーキの美しさが好きなのか、食べることが好きなのか、お客さんが幸せそうだからケーキを売るのが好きなのか、あのケーキ店だから憧れたのか、いろいろ見えてきます。
つくるのが好きならパティシエ、美しいケーキのデザインが好きなら、進むべきはデザイナーかもしれません。
ケーキを食べる、だったら食品メーカーで商品開発という道もあります。
売ったもので相手が笑顔になるのが好きなら、営業も向いています。
あのお店が好きだったからなら、店舗デザイナーの道もあります。
何もケーキでなくてよい場合だってある。
「ほんとうの好き」がわかれば、「どうなりたいか」もスムーズにわかります。
こんな仕事がしたい、と言葉にしておくと、チャンスも来ます。
それでもくじけたときは、「ほんとうに好き」が支えてくれます。
自分が夢中になって時間を忘れてしまうようなことと、世の中の人が「いいね」と言ってくれることが同じならそれは仕事になる。
私は自分の子どもたちに、そんなふうに伝えています。
(*本稿は『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』より一部抜粋、再編集したものです)
合同会社コトリ社代表
文案家(コピーライター)/クリエイティブディレクター
大学を卒業後、就職氷河期に貿易商社へ入社。幼少期から「書くことを仕事にしたい」という漠然とした思いがあり、1998年にコピーライターに転職。数社の広告制作会社を経て、2003年に一倉広告制作所に就職。2016年に独立し、現在は合同会社コトリ社代表。
主な仕事に、「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」「イット!」「健康にアイデアを」「こくご、さんすう、りか、せかい。」などがある。受賞歴に毎日広告デザイン賞最高賞ほか多数。著書に『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(ダイヤモンド社)、『あしたは80パーセント晴れでしょう』(リトルモア)ほか。東京コピーライターズクラブ会員。日本ネーミング協会会員。