韓国経済悪化の火種…家計債務問題や労使対立も

 株式市場に目を転じると、足元、韓国経済の先行きを慎重に考える投資家が増えている。2月23日、韓国銀行(中央銀行)は政策金利を3.50%に据え置き、23年の経済成長率予想を下方修正した。他方、韓国では物価が高止まりしている。予想よりも米国経済が底堅く推移する中、22日の出生率発表以降、ウォン売り圧力が一段と強まった。

 通貨安は、韓国のインフレを再加速させる要因になり得る。にもかかわらず利上げは休止された。少子化による内需の縮小均衡、家計債務問題などの懸念上昇を背景に、韓国銀行にとって理論的に必要な意思決定を行うことが難しくなっている可能性は軽視できない。

 2月下旬にかけての株式市場では、サムスン電子をはじめ主要銘柄が売られる場面も増えた。経済格差の拡大を背景に少子化が深刻化する可能性は高い。人口減少に伴い、労働と資本の投入量は減少する。

 韓国企業が新しい発想を実現して需要を創出することができれば、理論的に経済成長率の低下は食い止められるだろう。しかし過去、韓国企業はわが国や米国など主要先進国から半導体などの製造に必要な技術や資材、装置を調達した。半導体など先端分野での米中対立は先鋭化している。それはサムスン電子などの対中輸出にマイナスだ。

 また、韓国では景気への懸念が高まると、自動車などの分野で労使の対立が先鋭化してきた。今すぐではないにせよ、米欧で金融引き締めが長期化して世界経済の減速懸念が高まれば、韓国の労使対立が再燃する展開も排除できない。そうなれば、先行きを悲観視する若者が増え、経済と社会の閉塞感は高まるだろう。

 先が見通しにくい世界経済を踏まえると、韓国経済がそうした不安定な環境に向かう可能性は高い。22日の出生率発表後のウォン安と株安には、韓国経済の先行きを懸念する投資家が一段と増加したことが大きく影響したと考えられる。