避難指示が解除されても
生活の拠点はもうそこにはない

中間貯蔵施設東京電力福島第1原子力発電所を取り囲むように位置する「中間貯蔵施設」。2020年12月時点での各施設の想定範囲を示したものであり、用地の取得状況や施設の整備状況に応じて変更の可能性があるとのこと。 提供:環境省
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馬場 そうですね。そうした方々も当然いらっしゃいます。

 例えば双葉町では、発災後、町役場が一時的に埼玉県の加須市へ移って、さらにその後、福島県のいわき市へ移り、ようやく昨年の2022年8月に双葉町に戻ってきました。役場機能が自分たちの町に戻るのに11年を要したんですね。その間、双葉町の町民は、別の場所へ移り住んだり、家を買ったりと、新しい生活を始めている方も多いんです。

 ですので、「避難指示を解除しました、町役場が復活しました、皆さん帰ってきてください」とどんなに行政側が伝えたとしても、「もう避難先で生活の拠点ができてしまっているから、なかなか帰ることはできませんよ」という方もやはりいらっしゃいます。

 一方で、戻ることは難しいけれど故郷に思いがある、という方も当然、多いので、環境の再生は着実に進めていかなければなりません。

――マップを見ると中間貯蔵施設はかなり広範囲ですが、もともとは地元の人たちが暮らしていたところを、中間貯蔵施設用に土地を売ってもらったということでしょうか。

馬場 そうです。全部で約1600ヘクタールあって、東京の渋谷区とほぼ同じ面積です。地権者の方が約2000人いらして、用地として土地を譲っていただけないか、交渉させていただきました。代々受け継いできた土地ですので、当然、最初は怒られながらですが、数年かけて少しずつ応じていただけるようになり、今は8割くらい用地取得が進みました。

――国の所有以外の残りの部分はどういった土地なんでしょうか?

馬場 「地上権」(※他人の所有している土地を使う権利)を設定することで、国に貸してくださっている方もいらっしゃいます。土地を国がお借りし、2045年までに元に戻してご返却するというものです。

――中間貯蔵施設には、どのくらいの除去土壌が集められているのですか?

中間貯蔵施設中間貯蔵施設の1部(南側)。奥に東京電力福島第1原子力発電所が位置する。 提供:環境省
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馬場 約1341万立方メートルです。(泳ぐ)25メートルのプールを想像していただきたいのですが、その2万8000杯分となります。東京ドームだと約11杯分ですね。これを各エリアの仮置場から10トンのダンプトラックなどで運搬しました。最大で1日2000台使うこともありました。

 1日約2万人の作業員が除染し、2000台のダンプトラックが処理後の土壌を運ぶとなると、現場で作業をする人たちも大変なんですね。トラックから土壌をこぼすことは絶対にできませんし、地元の方々との信頼関係を損なうわけにはいかないので非常に慎重に行いました。1つ1つの作業をしっかりと管理し、本当に安全第一です。

――今後の課題は、中間貯蔵施設に集められた、これらの大量の除去土壌の行方ですね。まだ行き先はまったく決まっていないのでしょうか?