これについて、筆者の河治良幸氏は、森保監督が細かい対応を選手の個人戦術やコミュニケーションに任せ、約束事が足りないと指摘されることもあるが、戦術が固まっていると、良くも悪くもこうした状況で柔軟に対応できなかったり、監督の指示待ちになったりする、と指摘したうえで、賛否両論はあるが、「選手間である程度、解決を図れるマネージメントをしてきたのは”森保ジャパン”の特徴であり、ここではそれが生かされたと思います。それにしても守田のナイス判断と発信、そして谷口の対応力でした」と総括し、OODAが機能したことを高く評価している。ただ、このときの選手の対応力は監督の評価とは別に考えるべきであろう。
よく言えば、選手間のコミュニケーションを触発し、自由かつ柔軟に対応することを奨励しているようにも思える。しかしながら、ガビが捕まえられない状況にあったことは、ピッチで見ていればわかっていたはずで、選手らの調整を待たずとも監督自らが指示できたはずである。というよりも、スペイン戦において、ガビ対策はもっとも重要な対応のひとつであり、それに備えるプランを用意すべきだった。さらに、もし予想外の行動をしてきた場合にどうするかについても、あらかじめ、だいたいの方向性を決めておかなくてはならなかった。
コンティンジェンシープラン欠如は
トップとして致命的
ここにおいても、コンティンジェンシープランの欠如が明確であり、ドイツ戦と同様に、基本プランのない中で、選手たちが自らその高い能力でもって、自らOODAを発動して補整したというのが実際のところであろう(守田と谷口、さらには板倉が突発的に対応できたのは、基礎能力の高さもさることながら、川崎フロンターレでかつて一緒にプレーしてその特質を分かり合っていたからである)。
以上のことからしても、森保監督は本来やるべきコンティンジェンシープランの作成と準備が絶対的に足りていないことが明確なのである。これは指揮官としては致命的である。
ただ、リーダーには、そういったスキルレベルを超える重要な要素もある。