「違和感」を大切にすることからイノベーションが生まれる

ユーザーインサイトを製品価値につなげる組織とデザイナーの条件Yojiro Kinoshita
コクヨ株式会社 ワークプレイス事業本部 ものづくり本部 1Mプロジェクト プロジェクトリーダー
京都市立芸術大学でプロダクトデザインを学ぶなかで椅子のデザインに興味を持ち、1990年、オフィス家具を扱うコクヨに入社。以来オフィスチェアーを中心に、家具全般の先行開発およびアドバンストデザインを担当する。人間工学や脳科学の視点から行動観察を行い、デザインとエンジニアリングを融合した開発手法でコクヨのイノベーションをリードしている。ドイツiFデザイン賞金賞、Reddot デザイン賞Best of the Best、グッドデザイン賞金賞等、受賞多数。
Photo by ASAMI MAKURA

――「『デザイン経営』宣言」でも示されたように、デザインがイノベーションに貢献することへの期待が高まっています。何が重要でしょうか。

 社会課題を自分ごとにすることだと思います。小さなテーマでもいいので、自分ごと化できる課題を見つけ、それを仕事とつなげていく道筋をつくることではないでしょうか。

 コクヨの「しゅくだいやる気ペン」という商品はご存じですか。ペンの動きをセンサーで計測し、そのデータがスマホに送られると、ペンを動かした時間に応じてすごろくを進んでいくというゲーミフィケーションを用いたIoTグッズの一種です。「本当にやる気になるの?」と思われるかもしれませんが、実際にやる気になるんですよ、これが(笑)。これを開発した社員は、自分の子どもをひたすら観察して企画を立てたそうです。「子どもの勉強のやる気を上げる」という小さな課題を親の立場で自分ごと化し、コクヨが取り組む意味につなげて製品化した例ですね。

――やはり「観察」が重要な要素なのですね。

 そう思います。加えて言うと、自分の感覚に素直になって観察することが大切だと僕は考えています。常識にとらわれずに素直な気持ちで見るということです。常識が先に立つと、自分が抱いたちょっとした違和感を封印してしまうことになるからです。確かに、日々違和感を抱きながら生きるのは疲れることなのですが、それがないとイノベーションにつながるアイデアは生まれないと思います。

 そういう日常的な違和感を払拭するために新しいものを生み出していくこと。それができるのがデザインの力なのだと思います。役に立つものを作るだけでなく、美的で心地良いものを作りたい。それが僕の一番のモチベーションですね。