『週刊ダイヤモンド』3月25日号の第一特集は「お金の終活」です。先が短いシニアの資産運用や管理はどうしたらいいのか。退職金や長年コツコツ貯めた預貯金は、何もしなければインフレで目減りしていくばかり。大きく増えないけど減らさない運用とは? 高齢になると怖いのが、ボケたり、ちょっとしたケガで寝込んだりすること。残された家族が困らないためのお金の終活はどうしたらいいのか。いろいろな選択肢を探りました。(ダイヤモンド編集部)
退職金がでたカモネギの高齢者を狙う
金融機関の甘い誘い
定年で退職し家でぶらぶらしていたHさんが、近所にあるM銀行にのこのこと出かけていったのは2022年12月のことだ。

声のきれいな女性行員から、「資産を形成したいなら、お勧めしたい金融商品がある」と、何度も勧誘の電話をもらっていたからである。
出迎えた女性行員が強く勧めてきたのが「ファンドラップ」。複数の投資信託(投信)に分散して投資してくれる金融サービスで、言ってみれば、投信を集めた投信のようなものだ。
「お忙しい方やマーケットを見て自分で判断するのが面倒な人のために、運用のプロがその人にあわせた運用を行ってくれます」
女性行員が流ちょうにファンドラップの内容や特徴を説明する。投資金額は300万円からで、顧客の運用方針にあわせて「積極型」や「安定型」など6つの運用コースを設けている。
「確定利回りではありませんが、5年ももてば、安定型なら年2~3%、積極型なら年4~5%台の利回りが期待できます」
手渡してくれたパンフレットには、太字で「ご契約時のお申込み手数料は無料です」と書いてあった。だが、裏面には「ご留意点」として小さな文字がびっしりと並んでいて、「固定報酬型:基本報酬率/上限年率1.54%<消費税込>」とあるのがなんとか判別できる。これは契約時の手数料はゼロでも毎年、残高の1%以上の金額が運用資産から差し引かれるということである。
プロが運用してくれるのだから、そのくらいの手数料は仕方がないか、と思ったHさんは念のため、女性行員に聞いてみた。
「手数料はこれだけですか」
「これ以外にも、各投信に払う手数料が……」
それまで歯切れよく説明していた女性行員の口調がとたんに重くなった。