年初からマーケット環境が悪化したものの、少額投資非課税制度(NISA)の拡充が決まり明るい日差しが差し込む証券業界。2022年は仕組み債だけでなく、「顧客本位の業務運営」を象徴する商品として販売されてきたファンドラップにも金融庁はクレームをつけた。国内個人営業は23年も引き続き我慢の1年となるのだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
コロナ禍の株高から一転した1年
相場操縦事件で業績も悪化
2022年は「我慢の1年」だった――。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった20年以降、各国中央銀行の金融緩和と米国ハイテク株の活況によって、証券マーケットは好調に推移した。日本の証券各社はコロナ禍の中、個人と法人の両部門で好業績を謳歌してきた。
だが22年は一転。ロシアによるウクライナ侵攻と米国の急激な利上げで株式市場は軟調な動きを強いられた。企業の資金調達ニーズが激減し、個人顧客の投資マインドも減退。足元の収益が落ち込んでいる。
23年3月期上半期決算を見ると、野村ホールディングスとみずほ証券は米国の債券売買部門が好調で全体の業績を一定程度支えているが、大和証券グループ本社は法人部門が経常赤字。SMBC日興証券は22年に副社長らが逮捕、起訴された相場操縦事件を受けて法人顧客が離反したこともあり、94億円の最終赤字となった。
証券会社の業績は市況に左右される。23年の市況について業界では、米国の利上げペースが鈍化し株価が回復するとの期待と、欧米の実体経済の悪化が株価を下押しするとの好悪両方の見方がある。
日本銀行は12月20日、長期金利の許容幅をプラスマイナス0.5%以内に広げると急きょ発表。為替相場は一時、132円台の円高となり、日経平均株価は急落した。黒田東彦総裁が4月に交代するため、金融政策の先行きは見通しにくい。
ただし国内の個人営業には、明るい希望の光が差し込んでいる。
岸田文雄政権が掲げる「資産所得倍増プラン」だ。とりわけ業界の宿願である少額投資非課税制度(NISA)の改正が24年から実現する運びとなった。
だが、証券業界は手放しで喜べるわけではない。業界への風当たりの強さを考えれば、金融庁からのリクエストは23年にますます厳しくなる可能性があるからだ。その萌芽はどこあるのか。