オンライン会議では長くやっても結論が出ない理由【スマホはどこまで脳を壊すか】榊 浩平(さかき・こうへい)
1989年千葉県生まれ。東北大学加齢医学研究所助教。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)がある。

オンラインでは相手に好印象を持たないとの結果も

 対面コミュニケーションとオンライン・コミュニケーションが持つ性質の違いについて、海外で行なわれた研究をご紹介しながらもう少し詳しく見ていきましょう。

 米国の研究グループは、グループの意思決定場面におけるオンライン会話の特徴について、いくつかの研究結果を集計して報告しています。グループの意思決定とは、例えば、今後の予定や目標を定める、問題を解決する、新しいアイデアを生み出す、異なる意見をすり合わせて交渉する、などを目的とした話し合いのことを指します。

オンライン会議では長くやっても結論が出ない理由【スマホはどこまで脳を壊すか】『スマホはどこまで脳を壊すか』
著・榊浩平、監修・川島隆太 定価935円
(朝日新聞出版)

 解析の結果、対面会話と比べて、オンライン会話では、目標の達成が難しく、話し合いにかかる時間が長く、会話の満足度が低いことが報告されています。やはり、活発な議論が必要になるような重要なテーマについて話し合うときには、オンラインは不向きだといえるでしょう。

 英国では、48人の大学生を対象に、初対面の同性の相手と1対1のペアで会話をした後に、相手に対してどのような印象を抱くのかを調べました。学生たちを半分に分けて、24人が対面、もう半分の24人がオンラインで会話する条件で行ないました。相手の思考を読むようなカードゲームをペアで行なった後に、相手に対する印象を問うアンケートをとりました。

 その結果、対面に比べて、オンラインでは、相手に好意的な印象を持たず、賢いと感じなかったという回答が多かったことが報告されています。このように、対面とオンラインでは、相手に抱く印象にも違いが現れてくるのです。

AERA dot.より転載