「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が3月1日に刊行された。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。今回は、本書の刊行にあたり、著者に「百年戦争の英雄、ジャンヌ・ダルク」について教えてもらった。

フランスでは「英雄」、イギリスでは「頭のおかしい悪女」。ジャンヌ・ダルクの評価は、なぜ英仏で異なるのか?Photo: Adobe Stock

フランスの英雄ジャンヌ・ダルクは「遅咲きの英雄」

 百年戦争の英雄、ジャンヌ・ダルクを知っていますか? 

 百年戦争とは、1339~1453年に起きたイギリスとフランスの戦争です。ここでフランスを勝利に導いたといわれているのがジャンヌ・ダルクです。「オルレアンの乙女」とも呼ばれる彼女は、教皇庁から聖女に列されています。

 しかし、彼女が「遅咲きの英雄」だったことは意外に知られていません。1431年に異端として処刑された後、聖女に列されたのは1920年。なんと彼女の死から500年近くが経ってからなのです。

 実はジャンヌ・ダルクは、もともとフランスでもそんなに評価されていませんでした。19世紀のはじめ、ナポレオンが国家の指導者として彼女のことを持ち上げたために、その知名度が一気に上がったと言われています。

イギリスでは「魔女」として描かれる

 一方で、百年戦争の敗戦国イギリスでは、ジャンヌ・ダルクは真逆の評価がなされています。

 例えば、イギリスが誇る劇作家シェイクスピアの史劇『ヘンリー六世 第1部』では、ジャンヌ・ダルクは、神に選ばれた神聖な存在であると喚き散らし、羊飼いの娘であるにもかかわらず高貴な生まれだと偽る存在として、頭のおかしい魔女のように描かれています。

 このように現代で有名な偉人の評価は、国によって見方が違うことがあります。英仏におけるジャンヌ・ダルクの評価の違いは、百年戦争の勝敗が理由の一つだと言えるでしょう。

東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。