「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、その悩みに明確な答えを与えてくれる「アドラー心理学」。日本では無名に近かったこの心理学を分かりやすく解説し、世界累計1000万部超のベストセラーとなっているのが『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の“勇気シリーズ”です。
この連載では、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が、アドラー心理学の教えに基づいて、皆さんから寄せられたさまざまな悩みにお答えします。
今回は、お金を通したやり取りに複雑な思いを抱いてしまう女性からのご相談。岸見氏と古賀氏がアドラー心理学流に、「お金」についてどう考えればよいかズバリ回答します。(構成/水沢環)

『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者があなたの悩みに答えますイラスト:羽賀翔一

今回のご相談

 私はお金を出すことに対する抵抗感がとても強いです。人間関係にも常に対価や見返りの精神が付きまとっているように感じてしまい、窮屈です。この世にもしお金がなかったら、人間関係に今と変わるところがあるでしょうか?(40代・女性)

「アドラー心理学流」回答

古賀史健 お金はものすごくシンプルで分かりやすい価値交換のツールですよね。僕たちはお金というモノサシがあるから、物やサービス、あるいは自分の労働をスムーズに交換することができます。

 もしお金というモノサシがなければ、「自分はこんなサービスをしたから、これだけ返してほしい」「いや、それにはそんな価値はない」などの言い争いが絶えない大変な世の中になってしまうと思います。たとえるなら、通訳のいない国際会議みたいな場所。皆がなにか言っているけど、全然話が通じていなくてずっと争いが絶えない。そんな相互の承認も理解も得られない場所になると思うんです。

 もちろんお金って即物的で嫌だな、卑しいなと思う気持ちもよく分かるんですが、お金があることによってスムーズに回っているものがあると僕は思っています。

岸見一郎 ギブアンドテイクがすべてだと考えている限り、お金があろうとなかろうと、生き方や人間関係に対する考え方は変わらないと私は思います。

 たしかにお金はとても大切ですが、世の中あらゆるものがお金だけで動いているわけではありません。自分の知識や労働への対価を求めるのは当然です。しかし、対価が十分でなくても引き受けたいと思う仕事もあるはずです。儲かればどんな仕事でも引き受けていいかと言えば、そうではないでしょう。

 そんなふうに、お金だけでは動かない人たちもいると知ることで、対人関係に関する見方も変わってくるのではないでしょうか。

(終わり)