2001年、小泉元首相にとって初期の訪米時に、「武田流の流鏑馬(やぶさめ)奉納で用いる鶴岡八幡宮の『かぶら矢』」を手渡した。これは、ブッシュ元大統領が、かつて知人から贈られた「明治神宮の破魔矢」に毎日勝利を祈願し、下馬評の低かった1994年のテキサス州知事選挙に勝利したという情報を基に実施された。事実、ホワイトハウスの執務室に、その「明治神宮の破魔矢」が飾られていたのだという。
首脳同士の付き合いに限ったことではないが、相手の欲しいものを調べて渡すというのは、当然のことだろう。それが、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領への贈り物は「首相のサイン入り、地元県産の必勝しゃもじ」だという。甲子園のアルプススタンドにでもありそうな「しゃもじ」をプレゼントされることを、ウクライナの大統領は望んでいたのだろうか。
外交の場は、岸田首相の地元アピールの場ではないのだ。G7サミット(主要7カ国首脳会議)の開催地も「核抑止の場」として、広島が選ばれたようだが、選挙対策ではないかという疑念を抱かせたくないなら、もう一つの被爆地「長崎」を選ぶべきではなかったのだろうか。
「3世議員」の岸田首相も
その息子の政務秘書官も詰めが甘い
その辺り、形式的には過去の事例を踏襲しつつも、根本的なところで詰めが甘い「世襲政治家」のデメリットを感じてしまう。岸田首相は祖父・父も衆議院議員を務めた3世議員だ。
一方、前述のブッシュ元大統領への『かぶら矢』を提案したのは、小泉政権の首相首席秘書官だった飯島勲氏だ。相手の歓心を得るにはどうすればいいかを、たたき上げの秘書官は徹底的に調べ上げたわけだ。
世襲政治家も、何かお土産を持っていくのがしきたりだ、とまでは、思いをはせることができるのだろうが、何を持っていくかは「よきに計らえ」となってしまったのだろう。
岸田首相の長男で、政務秘書官をしている翔太郎氏も詰めが甘い。
日本のエアフォース・ワン(政府専用機)では、海外を訪れたときは買い物をしても免税されない。これはエアフォース・ワンが免税に必要なフライトナンバーがないためだとされている。翔太郎氏は、英ロンドンの高級百貨店でブランド物のネクタイを大量に買って閣僚たちのお土産にしたというが、なぜ免税にもならないネクタイを大量に購入したのだろうか。
外国での国家公務員の買い物は厳しくチェックされているはずで、その辺りの詳細がこれから明らかになることを望みたい。