4月になり新年度を迎えるこの時期、新たな環境に身を置く人も多いのではないだろうか。学生であれば入学式、社会人であれば仕事の異動や転勤、様々な変化がある。希望通りの進路に就けた人もいれば、思わぬ結果になって新たなはじまりを迎える人もいるだろう。この春、「選ばれなかった」ことをテーマにした書籍『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(阿部広太郎)が刊行された。そのキャッチコピーとして帯に掲載されている「不安なのは、君が本気だからだ」という文言がどのようにして生まれたのか、担当編集者が振り返る。(文/ダイヤモンド社・亀井史夫)

「不安なのは、君が本気だからだ」はどこから生まれたのか?Photo: Adobe Stock

試行錯誤の過程を公開

「あの日、選ばれなかった君へ」をタイトルにすると決めてから、本の制作はスムーズに進み始めた。コンセプトが明確になったからだろう。

「選ばれなかった」という表現がわかりにくいのでは、という意見も編集部内ではあったが、それはスルーした。他に妥当な表現が思い当たらなかったということもあるが、それより、青春時代に「選ばれなかった」ときの気持ちを大切にしたかったからだ。志望校に落ちたとき、失恋したとき、選抜メンバーから漏れたとき…そのときの胸が締め付けられるような苦しさ。きっとその思いが伝わる人はたくさんいるはずだ。

 タイトルの次はサブタイトルをどうするか。サブはメインタイトルを補う、説明的な言葉を使うことが多い。

 新しい自分に生まれ変わるための七つのメッセージ

 これを提示すると、著者の阿部広太郎さんは細部にこだわった。「メッセージ」は大仰なので、泥臭く「メモ」にしたい。さらに漢字の「七」ではなく、数字の「7」を使って、「7枚のメモ」にしたいと。

 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ

 さて次は帯に使うキャッチコピーである。これは店頭でとても目立つ部分なので、タイトルと同じくらい重要だ。この本はあなたにとって重要な意味がある本なんですよ、と気づいてもらわなければならない。他人の物語ではない。あなた自身の物語を振り返りながら読んでほしいのだ。

「人生に不安を抱いている人に手に取ってもらいたい」という狙いは明確だったので、「不安」という言葉を入れることは決めていた。

 不安で押しつぶされそうな君へ。

 悪くないけれど、タイトルと「君へ」が被ってしまうことが気になった。そこで少し修正した。

 不安で押しつぶされそうだけれど。

 しかし編集部内では「もう一息」「なんかもったいない」という意見が多かった。さてどうしたものか。こういうときは原点に帰って原稿を読み込むに限る。

 すると…あった! ちゃんと書いてあった。

 不安なのは、君が本気だからだ。

 これはいい。いい加減な気持ちならば、そもそも不安になんかならない。本気だから不安なんだ。不安を抱えている自分が肯定されている気持ちになって、なんだかやる気が出てくる。いいぞ。

 阿部さんに見せると「いいの考えましたね」と言われた。いやいや、阿部さんの原稿の中に元々あったんですよ(笑)。