「女性活躍」が叫ばれる直前の時代
価値観が変わるはざまの世代として思うこと
原田 大学卒業する頃、僕らの世代は就職氷河期で、すごく暗い時代だったんですよね。僕は学生の頃、テレビ局で木村拓哉さんのドラマを作りたかったんですよ。でも、フジテレビもTBSも最終面接で落ちてしまって、どうしようと思ってたら、大学のゼミの先輩で博報堂に勤めていた方が、「お前、広告会社どうだ?」って誘ってくださって、博報堂を受けて入社しました。
博報堂には2017年頃までずっと勤めてました。そこで、若い世代のマーケティングに関する部署を立ち上げろって言われて、若者研究を始めて、テレビにも出させていただくようになりました。今は大学の先生を本職にしています。元々はドラマを作りたかったんですけどね。
山口 でも、テレビには出演されるようになったじゃない!
原田 確かに、もえちゃんと度々ご一緒するようになるとは本当に思ってなかった。しかし、あの就職氷河期時代は、高学歴者でも就職が難しかった人もたくさんいたし、非正規雇用も急激に増加したし、本当に悲惨な時代でしたね。今は少子化が進み過ぎ日本全国人手不足。このコロナ禍においても若者の有効求人倍率は非常に高い真逆な状況になっています。
山口 その頃から、就職しないで起業される方も出てきたのかなという感じがします。就職という形と、また違った形を生み出し始めた世代なのかなと。
原田 就職氷河期世代の40代のIT長者も多いですしね。堀江貴文さんとか、ひろゆきさんとかも世代近いですもんね。
あと、我々は、菅野美穂さん主演ドラマの『働きマン』とか、綾瀬はるかさん主演の『ホタルノヒカリ』とかに描かれているように、女性が今ほどワークライフバランスが保てず、仕事以外に恋愛も子育てもしなきゃいけなくてボロボロになる女性像が描かれた世代だと思います。もえちゃんは、仕事と生活のバランスはどうでしたか?
山口 20代はとにかく働いて…もし休んだら自分が座っている席には、他の子が座るっていう世界でした。休みすらもうのんびり休んでられないような時代でしたが、私が40代になってから、働くことも大切だけれども、ちゃんと自分の時間を取ることも大切だよっていう価値観になってきました。ずいぶん時代が変わったなって思います。
原田 最近、岸田文雄首相が「育休中にリスキリング」と発言したことも話題になりましたけど、もえちゃんはどう思いますか?
山口 私は休みなく仕事をしてきて、30歳の時に出産で初めて長期休暇をいただきました。それで自分の戻るところはあるのかなと、急に不安になってしまって。そこで、食品に関係する資格を取りたいと思い、野菜ソムリエになるための学校に通ったんです。自分が今までいた芸能の世界と、全然違う世界に飛び込んだのが初めてだったんですけど、日本料理の板前さんとか、スーパーで働いていてスキルアップのために来たという人とか本当にいろんな人がいました。そういう世界がすごく新鮮でした。
原田 大変ではなかったですか?
山口 もうすっごい大変でした。でも、すごく新鮮でした。だから、今、産休の方とか、お仕事休んでらっしゃる方で、何かやりたいなって思ってらっしゃる方がいらっしゃるなら、何かの門をたたいてみるっていうのはいいと思います。
その世界で学ぶこともありますし、そこで知り合った友達とご縁がつながって、違う道が開けるかもしれませんし。ピンチはチャンスじゃないけど、一度立ち止まるっていうのは、いいこともあるんだなって思いました。
原田 日常をずっと過ごしていたら、客観的に自分のことをあまり見ないで日々過ごしちゃうから、いったん立ち止まることは決して負けじゃないですよね。
山口 「仕事を一回やめて立ち止まるなんてどうしよう」って焦っちゃうんですけど、立ち止まるからこそ見えるものがありますよね。