スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長のデビュー作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、
現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる
と語った本書の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
情報7daysニュースキャスター」や「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」に出演した著者が、スタンフォードから最新の「科学的な子育て」をお届けする。(初出:2023年4月30日)

おしゃべりPhoto: Adobe Stock

「考える力」と「理解する力」を鍛える

学校では教えてくれない! 圧倒的に「聞き上手な人」がやっている極上のトレーニングとは?【書籍オンライン編集部セレクション】星 友啓(Tomohiro Hoshi)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
経営者、教育者、論理学者
1977年生まれ。スタンフォード大学哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。教育テクノロジーとオンライン教育の世界的リーダーとして活躍。コロナ禍でリモート化が急務の世界の教育界で、のべ50ヵ国・2万人以上の教育者を支援。スタンフォード大学のリーダーの一員として、同大学のオンライン化も牽引した。スタンフォード大学哲学部で博士号取得後、講師を経て同大学内にオンラインハイスクールを立ち上げるプロジェクトに参加。オンラインにもかかわらず、同校を近年全米トップ10の常連に、2020年には全米の大学進学校1位にまで押し上げる。世界30ヵ国、全米48州から900人の天才児たちを集め、世界屈指の大学から選りすぐりの学術・教育のエキスパートが100人体制でサポート。設立15年目。反転授業を取り入れ、世界トップのクオリティ教育を実現させたことで、アメリカのみならず世界の教育界で大きな注目を集める。本書が初の著書。
著者公式サイト】(最新情報やブログを配信中)

「考える力」が必須の時代。

 現代社会では、これまでの考え方や価値観は目まぐるしくアップデートされ続け、既存のルール内でこなせる仕事はどんどんテクノロジーに置き換わっています。

 ですから、今の子どもたちは、これまでのやり方や世界観に適応するだけでは、世知辛い未来を生き抜くことができません。

 現在の枠組みの外に飛び出す「創造性」のエネルギー。
 新しいやり方に適応して、「新しい価値」を生み出す力。

 その肝となるのがまさに「考える力」というわけです。

 では、この力はどのように育めばいいのでしょう?

 まずは、「理解する力」を鍛えることです。

 理解する力は、考える力と表裏一体。

 理解なしには考えることはできません。

 何かの問題を考えるとき、問題自体やその背景の「理解」が必要です。

 また、難解な題材を理解しようと考えを巡らすようなときでも、これまでに「理解」してきた知識や価値観をもとにして考えていきます。

 ですから、「理解力」を養うために、公教育で行われているような基礎知識をつけたり、読解力を磨いたりと、包括的なトレーニングが必要になるわけです。

 しかし、実際に日常コミュニケーションの中で、相手の伝えたいことを正確に理解し、そのうえで自分の思考力を豊かに働かせるには、「公教育でのトレーニング」だけでは足りない部分がある。

 そこで今回、拙著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』で紹介している、学校では教えてくれない、より実践的に理解力を鍛える、「極上の理解力トレーニング」の一部をお伝えいたします。

「学校でできないことを家でできるのだろうか?」

 と身構えることはありません。

 どれも日常生活の中で気軽に実践していけるものばかり。

 ぜひ、ご自身やお子さんにあったやり方を見つけて、仕事や勉強と併用して実践していきましょう!

「聞く力」は「話す力」

 理解力を鍛えるために欠かせないこと。

 それは、まずは相手の話を正しく「聞く」ことです。

 そこで、毎日の会話で、相手の話をしっかりと「聞く」ための重要メソッドをご紹介します。

 その名は「アクティブ・リスニング

 これは、現代心理療法のさきがけ的存在であるカール・ロジャース氏が提唱[1]した方法で、心理療法やカウンセリングだけでなく、社会人教育の場でも幅広く応用されてきたもの。

 極上の理解力を手に入れる一歩として、会話に適宜エンゲージしていく、この「アクティブ・リスニング」が必要です。

 また、アクティブ・リスニングを身につけると、子どもの「理解力」だけでなく、自信がアップしたり[2] 、メンタルが安定して友人関係がうまくいくなど[3] 、心の面でもいいことづくめなことがわかっています!

 以下に、アクティブ・リスニングを実践するために気をつけるべき点を、拙著『スタンフォード式 生き抜く力』から厳選して紹介していきます。

 仕事や学校で、相手の話に耳を傾けて、静かに真剣に聞いているつもり。

 だけど、ふと気づくと他のことを考えてしまっている。

 相手の話は半分に、次に自分が話すことばかり考えてしまっている。

 そうした場面は、仕事や勉強のみならず、日常のコミュニケーションの中ではしばしば起こりうるものです。

 このように、完全に聞く側として黙り込み、相手の話に受身(passive)に耳を向けるだけの「パッシブ・リスニング」(passive listening)では、相手の話していることを十分に理解する機会を逸してしまいます。

 そこで、話にしっかり集中し、相手の言うことを正確に聞き取り、的確に理解していくためには、積極的に対話に参加していく「アクティブ・リスニング」(active listening)のテクニックが効果的です。

 極上の理解力を手に入れる一歩として、受身に聞くだけのパッシブ・リスニングから、いいタイミングで会話に参加できるアクティブ・リスニングへの転換が必要で、つまり聞き上手になるには、「話し上手」にならないといけないのです。