逆に、出張帰りで疲れているので仕事をするわけでもなく、ビールを飲みながらゆったり帰ろうという場合は、普通席や自由席でもいいだろう?なんなら、新幹線は『のぞみ』ではなく、『ひかり』や『こだま』でもいい。この場合、アウトプットの質や量に関係ない移動時間に追加料金を払うのはコストパフォーマンスが悪いから、安く済ませたほうがいいというわけだ」

ママ「よくビジネス自己啓発書には『移動は必ずグリーン席やビジネスクラスに座れ』とか書いてるけど、時と場合によって分けろということね」

パパ「ほかにも、たとえばラーメン店や宝くじ売り場、正月の初売りなどでよく見かける行列。それもやはり、並んで得られるものの価値とかける時間とを天秤にかけて、どちらがより生産的(あるいは楽しいか)なのかを考えて判断することだ」

ママ「レストランなんかなら事前に予約することで並ぶ時間を節約できるとか、テーマパークなんかでもファストパスやエクスプレスパスを買うほうが同じ時間でたくさんのアトラクションを楽しむことができて、より有効な時間とお金の使い方ってことになるわけね」

パパ「逆に、たとえば数年に一度しか日本に来ない著名アーティストの公演チケットを買うために並ぶのであれば、必要な時間ということになるかもね」

ママ「なるほど~。つまり、この場面では自分の時間を使ってお金を節約するほうが合理的、あの場面ではお金を使って自分の時間を節約するほうが合理的、っていちいち考えるということね」

パパ「そう。自分の時間も自分のお金も、つねに価値が一定なわけではなく、その時々に応じて価値が変わるんだ。そこを峻別できるようになれば、後悔の少ないお金と時間の使い方につながると思うよ」

相続すべきものは
お金ではなく“知恵”

ママ「ねえパパ、ママ友がね、義理の両親からマンションを買う頭金を出してもらったんだって。しかも1000万円も!いいわねえ」

パパ「そうか?むしろ気の毒だと思うけどね」

ママ「えー、なんで?」

パパ「たとえば、マイホームを買いたいけれどもお金が足りない。じゃあどうする?複数の銀行にあたったり、ローンアドバイザーに相談したり、売主に値下げ交渉をしたりするよな。そうやって、どうすれば買えるかいろいろ工夫する。

 でも、親から援助してもらえるなら、そんなことを考えなくてもいい。つまり、思考停止を招くってことじゃないか?」