午堂登紀雄 著
ママ「でも多くの親は、子が困っていたら手を差し伸べたくなるものじゃない?」
パパ「それは僕も同じだよ。その気持ちが問題なんじゃなく、安易にお金を与えることが問題だと思ってるんだ。
中国の故事に『貧しい人に魚を与えても、食べてなくなればまた飢える。しかし魚の釣り方を教えれば、自分で魚を釣れるから貧困から抜け出せる』というものがあるんだけど、それと同じ。支援すべきは、「お金」でなく「知恵」なんじゃないかな」
ママ「知恵、ねえ」
パパ「子どものマイホームの頭金に1000万円援助するよりも、よほど価値のある支援とは何か。それは、お金や不動産ではなく、好奇心や自分の力で人生を切り開く前向きなマインドといった知的基盤だと思ってる。
たとえば、日本のサラリーマンの平均生涯賃金は約2億円だと言われているけど、もし自分の子が10億円稼げるようになれば、8億円の財産を残したのと同じことになるだろう?
そう考えれば、マイホームの頭金の1000万円など取るに足らないと感じないか?
それに、お金を遺せば税務署に持っていかれるけど、頭脳はだれからも奪われない」
ママ「じゃあ、あの子たちにもお金は残さないってこと?」
パパ「そうだね。僕は、お金も何もない状態から人生を切り拓くことは最大の醍醐味の1つであり、人間が人間であることの存在意義だと考えているんだ。何もせずにお金をもらえたら、人は創意工夫や努力から離れていくし、困難なことへのチャレンジやリスクを取ることを避けようとするかもしれないだろう?」
ママ「パパはキビシー!でもそれ、『獅子はわが子を千尋の谷に落とす』ってやつね」