いつも他人と比べてしまう」「このままでいいのか、と焦る」「いつまでたっても自信が持てない…」。仕事や人生に悩んでしまった時、どう考えればいいのでしょうか。『機嫌のデザイン』の著者であり、数々の名言がTwitterで話題となった、プロダクトデザイナー・秋田道夫氏の「毎日を機嫌よく生きるためのヒント」を紹介します。

「うちの会社ではこうだから」と言われた時、考えたほうがいいことPhoto: Adobe Stock

その場のルールかどうか、分けて考える

会社に所属している時も、わたしはニコニコしているし機嫌もよかったのですが、その割にはその場のルールにはあまり従っていなかったかと思います。

─その場のルールとは?

組織をうまく運営するためにつくられた技術や不文律のことです。

うちの会社ではずっとこうやってきました」と教えられるような蓄積されたノウハウですね。

そういえば、わたしは部屋のなかで帽子をかぶって、薄い色のサングラスをかけて仕事をしていました。

もちろん「そういう時代の空気に対する甘え」ですが、デザイン室にいる自分もデザインしたいという気持ちでした。若気ですね。

─当時から無二の空気をまとっていらっしゃったのでしょうね。しかし、新人時代には「とにかく会社のルールを覚えよう」と必死になる人が多いのでは。秋田さんはなぜ組織のルールを学ぼうとしなかったのですか。

もちろん社会人として学ばないといけないことがあることを承知していますし、そういう常識についてはちゃんと学んでいましたが、それがこの会社ならではの規則なのか、そうではないのかについてはちゃんと分けて考えようと思っていました。

一番大切なことは、デザインにおけるルールがその会社ならではなのか否かです。

そういう意味では会社に入った七〇年代の終わりから八〇年代の半ばまではオーディオのデザインが急速に変わる時期であり、自分の役割はそういう新しい造形感覚を会社に持ち込むことだと思っていました。

なんにせよ、生意気新入社員であったことは間違いありません。

─入社一年目で日本一の賞を受賞したのですから、まわりも納得されていたのではないですか。

どう思われていたかは分かりません。

ただ、自分の感覚としては、早めに世の中から評価をいただいたことで、自分の考える新しいデザインを持ちこむことに対しての勇気と自信にはつながっていたと思います。

実際にまだ二六歳のわたしに高級機種のデザインを任せていただきました。

今でも忘れられないのは、その製品のデザインスケッチを説明する会議でした。

その場にはたくさんの重役や責任者が集まっていましたが、その新しいデザインの説明を静かに聞いてくださって、さらには「大事な話が今ここでなされている」という空気感がそこにはありました。

(秋田道夫著『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』から一部を抜粋・改変したものです)