外部参入組よりも
世襲議員が力を持つ理由とは
かつて、官僚となり「閨閥」入りすることは政界への最短コースであり、庶民階級から政界入りする一つの道として確立されていた。
今考えると「閨閥」というシステムは前時代的であり、世襲の一種であることに変わりはないのだが、筆者はこの仕組みに一定の評価を与えている。
あくまで実力でのし上がってきた“強者”たちが、縁戚関係の力を借りて出世の道を切り開くという意味で、「純粋な世襲」とは異なるからだ。実力のない者は、そもそも「閨閥」入りすることは難しく、無条件で既得権益を享受できるわけではない。
だが現在は、閨閥のシステムは終焉を迎え、「純粋な世襲」が当たり前の時代になった。もちろん、外部から政界に参入してくる人材も存在するが、世襲議員のほうが政界でより指導的立場になりやすいのは事実だ。
その一因には、自民党の年功序列システム(当選回数至上主義)の完成がある(前連載第24回)。当選回数至上主義とは、国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、国会の委員会、党の役員といった、さまざまなポストを割り振っていく人事システムである。
自民党議員は当選5~6回で初入閣までは横並びで出世し、その後は能力や実績に応じて閣僚・党役員を歴任していく。
約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。
このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い。
例えば、小泉純一郎氏は30歳、橋本龍太郎氏は26歳、羽田孜氏は34歳、小渕恵三氏は26歳である。ちなみに、史上最年少で自民党幹事長を務めた小沢一郎氏は27歳で初当選した。