欲しいモノがなくても行きたくなる演出

 我々が100円ショップに行くのは買い物の必要に迫られているからだけではない。「何か面白いモノがありそう」という宝探し感をかき立てられ、ついのぞいてみたくなる。

 例えば、100円ショップが得意とするのがシーズンイベント商品だ。4月ならお花見、新生活、GWのアウトドアレジャーグッズなどが店頭に並ぶ。秋にはハロウィーン、冬にはクリスマス・お正月などいっそう華やかな店頭となる。おなじみのキャラクター商品も投入されていて、ファンの目を引き付ける。何かありそうだ、ちょっと見ていこうかというワクワク感をかき立てる演出に長けているのが、100円ショップだ。気づくと、なぜかカゴを持ってレジに並んでいる。店に誘い込まれた時点で勝負はついていたのだ。

 このように、二重三重に100円ショップには、消費ハードルを下げる仕掛けがそろっている。買うべきかやめるべきかを深く考えなくていい「100円均一」によってついで買いを誘い、浪費どころかおトクに買い物ができたという満足すら感じさせてくれる。何かありそうというワクワク感を演出し、人を呼び込み、来たときにはまるで考えていなかったモノまで買わせてしまう。ショッピングセンターが集客効果を狙って100円ショップを誘致するのは、なるほどよくわかる。

 100円ショップのビジネスは、まさに薄利多売。1個を売って利益を出すのではなく、さまざまな商品をあれこれ買ってもらってトータルでもうける構造だ。だからこそ、衝動買いやついで買いを誘う仕掛けが満載なのだ。

 最初の話に戻ろう。「100円なんだし、安いからまあいいや」「たった1個買うのもなんだから、ついでに」「棚を眺めていたらなんとなく欲しくなって」と、余計な消費をすればするほど、財布のお金は減る。無計画に購入した100円グッズがあふれている家は、消費トラップにはまってしまった結果だ。必要なモノをしっかり吟味して買う家に比べれば、お金はなかなか貯まらない。

 とはいえ、我々はとにかく「安さ」に弱い。そこを突かれるからこそ、ついつい100円グッズを買い込んでしまう。100円ショップでムダ遣いを防ぎたいなら、レジに並ぶ前にカゴの中の個数をカウントしよう。1つなら100円かもしれないが、8個入っていれば税込み880円、10個なら1100円の出費になる。この数字なら、これが適正な買い物かをちゃんと考える気になるだろう。そこで改めて、価格に見合うかのジャッジをしてみてはいかがだろう。