人口の2割が75歳以上を占める
「2025年問題」

 2019年度の要介護(要支援含む)認定者数は約669万人で、公的介護保険制度がスタートした2000年度の約2.6倍です(***)。団塊の世代のすべてが75歳以上となる2025年は、日本の人口の2割が後期高齢者、75歳以上です。いわゆる「2025年問題」です。

(***)…厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」令和元年

 まだほんの少数ではありますが、2025年問題に積極的に取り組む企業も出てきました。その1社が日立製作所です。

 私が同社の支援策の詳細を知ったのは、日立の担当者の方が私の書いた介護問題に関するコラムを読み、連絡をくれたのがきっかけでした。同社では45歳以上の社員が46%以上を占めることから、「介護離職はしない・させない」を合言葉に、2018年から「教育」と「支援施策」に乗り出したそうです。

 同社では、「隠れ介護は経営リスク」という企業戦略のもと、「仕事と介護の両立立ち上げ時に最大30万円/被介護人の金銭的支援」「最大年間10万円/被介護人の金銭的支援」「在宅勤務やスポットリモートワークなどの勤務柔軟化」といった、かなり充実した社内制度が整備されています。

 さらに、突然の変化に備えるために、「40歳以上の全従業員に仕事と介護の両立に関する基礎教育」と「全管理職に仕事と介護の両立マネジメント研修」を実施していました。

 話を伺えば伺うほど、「もっと社員に役立つ制度にしたい」「自分たちの取り組みに足りないものを知りたい」という熱い思いを感じ、「大丈夫!一人で悩まないで。職場のメンバーと会社と一緒にがんばりましょう」というメッセージを全社員に届けたいのだと痛感しました。

 日立製作所のような会社ばかりになればいいのでしょうが、残念ながら育児問題には取り組んでも、介護問題に興味を示さない会社が圧倒的です。誰もが老いるし、誰もがやがて介護される側になるのに、会社と介護を結ぶ糸はとてつもなく細い。一方で、介護は個人的な問題ですが、1人で抱えるのは無理。他者のサポートが必要不可欠です。