河合薫 著
「うちの父は夕方くらいになると、ソワソワして家から出ちゃったりしてたのよ。夕暮れ症候群ってやつだね。デイサービスもいやがってたんだけど、ヘルパーさんと協力してなんとか連れていくことに成功した。そしたら楽しかったみたいで。夕暮れ症候群も治っちゃったよ。たまに出るときもあるけど、確実に頻度は減ったよ」
「認知症って、わからないことだらけみたいよ。うちの母は猫がいるってずっと言ってたんだけど、言わなくなったし。季節や月によっては、まったく問題ないときもある。子どもは心配するけど、本人的には、まあそんな日もあるさ、くらいなのかなって思うんだよね」
などなど。
人間には生きる力があり、人には無限の可能性があることを、老いた親たちが教えてくれたのです。そして、老い方は人それぞれで、子のかかわり方も人それぞれ。しかし、どんな形であれ子には、「親を思う気持ち」があった。この歳になるまで、自分でも気がつかなかったほど強い、親への愛情です。だからこそブレーキをかけてくれる「他者」が必要なのです。