それを聴けば、ただ片付けるだけでなく、書類をわかりやすくまとめることが、上司にとっての「ちゃんと片付ける」だということがわかります。
そこでさらに、「お客様別に書類を分けて、ボックスに入れるのですね。確かにそうするとすっきりしますね」と伝え返すのです。上司は「わかってくれた」と安心し、不要な誤解も防げます。
「伝え返し」は、「あなたのことばを受け取りました」というメッセージを伝えるのと同時に、相手にそのワードについて再度考えてもらうきっかけづくりにもなる。つまり、話を深掘りすることができます。
「今年こそ英会話を習いに行きたいです」と相手が話したら、「英会話ですか」と伝え返します。
すると、「仕事で必要なのにずっと逃げてきたんです。でも、自分がしたい仕事をするにはやっぱり英語が必要なのです。今はオンラインの講座もあるので、気軽に始められるかなと思っているんですよ」といった答えが相手から返ってくることでしょう。
「英会話」というワードを伝え返すことで、そこに込められた思いや考えが飛び出してくるのです。
このように、伝え返しをすることによって、話を縦に深く掘ることができます。徐々に核心に近づいていき、結果的に、その人が本当に伝えたいことを聴き取ることができるのです。
文脈の中のキーワードを
キャッチする
とはいえ、ただただ伝え返せばいいというわけではありません。ポイントは、文脈の中のキーワードを伝え返すこと。
「昨日、発注ミスがあって、大変だったんだよ」というフレーズに対して、「昨日」とか「大変だった」を伝え返すのは、ちょっと的外れですね。この場合のキーワードは「発注ミス」ですから、「発注ミス」や「発注ミスがあったんですね」と伝え返せばいいのです。
また、感情を表すことばを伝え返せば、共感になります。
「課長に企画書を見せたら、頭ごなしにダメ出しされたよ。悔しいよ」と同僚が話してくれたなら、感情表現である「悔しい」というワードをキャッチして、「悔しいよね」と伝え返すのです。共感してもらえたことで同僚の中に「バディ効果」が生まれ、あなたへの信頼感を高めることでしょう。
嬉しい、楽しいなどプラスの感情も、悲しい、切ないなどマイナスの感情も、どちらも伝え返してOK。あなたの苦手な人がぼそっと感情を表現したら、伝え返してみましょう。その人があなたを見る目が変わるかもしれません。