「要約」で相手の要求や
思いを受け止める
「伝え返し」の次にトライしてほしいのが、「要約」です。学生時代に国語の授業で「要約」を習いましたが、まさにあの技術です。
「聴く」際の「要約」は、ひとしきり相手が話したところで、その内容を短くまとめて伝え返します。
「今の話を私はこのように受け取りました。合っていますか?」と「要約」することで、自分の解釈が正しいかどうかを確認できるのです。
私たちは自分の心のフィルターを通して、相手の話を勝手に解釈しています。自分の解釈が合っているかどうかは、確認しなければわかりません。
「伝え返し」と「要約」をすることで、誤解を防ぎ、ムダな対立やトラブルなどを避けることができます。
「要約」する際には、「今の話は○○ということですね」と、自分の解釈を伝えます。できるだけ相手のことばを引用しますが、かみくだいた表現を用いたり、相手を立てるためにことばを盛ったりしてもかまいません。
たとえば、上司から次のような指示を受けたとします。
「この企画なんだけど、昨日の会議で方向性が変わったんだよ。もっとこう、使う人にやさしい、わかりやすいほうがいいということになった。今の企画はおもしろいと思うんだけどね、わかりやすいかっていうと、ちょっと違うよね。わかる人はわかる、みたいな感じだよね。テーマはいいんだけど、ほら、今は、とにかくわかりやすいものがウケるでしょう。テーマはいいんだけど、難しいんだよな~。いやいや、僕はいいと思ったんだよ。だけど部長がね、『単純明快、シンプルイズザベストの令和版だ』って言いだして。そんな感じで作り直してくれる?」
この指示は、言わんとしていることはわかりますが、漠然としていますよね。少しわかりにくいです。
こう言われて「はい」とだけ返答してしまったら、上司が伝えようとしていたことと自分の解釈とがずれてしまう可能性があります。
そこで、次のように「要約」をします。
「テーマはこのままでいいけれど、万人にわかりやすいものになるように作り直すということですね。なるべくシンプルで、使いやすいものになるようにする。なおかつ令和の時代に合ったシンプルさを表現する。……ということでよろしいでしょうか?」