4月になり新年度を迎えたこの時期、新たな環境に身を置いた人も多いのではないだろうか。学生であれば入学式、社会人であれば仕事の異動や転勤、様々な変化がある。希望通りの進路に就けた人もいれば、思わぬ結果になって新たなはじまりを迎えた人もいるだろう。この春、「選ばれなかった」ことをテーマにした書籍『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(阿部広太郎)が刊行された。4月9日に青山ブックセンター本店で行われた阿部広太郎氏のトークイベントから、一部を再構成してお届けする。

「ダメだった」に魔法の4文字を足すと奇跡が起こるPhoto: Adobe Stock

原案はコンテストで2回落選していた

――『あの日、選ばれなかった君へ』という作品が生まれた背景を教えてください。

阿部 広太郎(以下、阿部) この本の最初の入口は、2013年にあった「クリエイターコンテスト」なんです。コピーライターになって4年目ぐらいの時ですね。その時に、コピーライターの可能性って、放送作家さんとか構成作家さんみたいに、いろんなものを作れるんじゃないかって思ってたんですね。だから、広告以外の賞にも出してみようと。でも、この賞に、原稿用紙に作文を書いて出しても勝ち目がない気がして、目立つ方法がないかというところで、文章だけでなくデザインも一緒に組んで、冊子にして応募しました。

―― それで、入選とかしたんですか?

阿部 かすりもしませんでした(笑)。でもその冊子のことはずっと心の中にあって、信頼する人とかに見せたりすると、いいじゃんみたいに言っていただけた。ちょうどnoteを使い始めたタイミングだったんで、これも載せようと。で、これも当時のcakes(現note)がやってるコンテストに出してみたんですけど、ここでも選ばれずダメだった。

―― またダメだったんですね。

阿部 でも見てもらえる人がいる、感想をいただけるっていうことがすごく嬉しくて。それでfacebookにもシェアをしたんです。そしたら亀井さんっていう『心をつかむ超言葉術』という本を2020年に刊行した時にご一緒した編集者の方から、「これいいね。本にできるかも」っていうコメントいただけて、自分でもびっくりしたんです。まさかそんなふうに本にできるなんて思いもよらなかったんで。

―― 捨てる神あれば拾う神ありと。

阿部 エントリーしても選ばれないっていうのは、きっとどのジャンルでもたくさんあると思うんですけども、1つ1つのアイデアとか案が、輝ける場所っていうものがきっとあるんだなって強く思います。没になることはどこでもあると思うんですけど、「ダメだった」にあと4文字足して、「ここではダメだった」と思いたい。ここではダメだったかもしんないけど、ちゃんと引き出しにしまっておけば、いつかそれを使える時は来るよ、没だからダメだってそんなに思わなくていいからねと。

―― ずいぶん赤裸々なエピソードも書かれていますよね。

阿部 選ぶ選ばれないって、例えば、受験だったりとか、就活だったりとか、 恋愛だったりとか、いろんな局面であると思うんですよね。選ばれなかった時って、やっぱりすごい落ち込むし、へこむし、辛いな、しんどいなって思う。やけになったりもする。でも、それを受け止めて、どういう風に再出発することができたのか、その時よりも成長した自分が当時の自分に、どんな言葉をかけるのかっていうところを書きたかったんです。選ばれなくて落ち込んだ後でも、勇気が湧いてくるような、そんな本を書けたらな、と。

―― 自己啓発書でもあるんだけども、ちょっと小説っぽさもあるみたいな、ちょっと変わったテイストですよね。

阿部 そう言ってもらえてすごく嬉しいです。社会では選ばれるために、こういう風にしたらいいよっていうのはたくさん教えてもらえるんですけど、選ばれなかった時に、どうすればいいのかってあんまり語られてないし、教えてもらってないよな、と思って。傷ついたことが、すごく自分の輪郭をはっきりさせていく。そんな思いがあって。だから僕の自伝とかじゃなくて、読んだ人にとっても自分のエピソードが湧き起こってくるといいなと思って書きました。