さらには今後、ミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)やZ世代(1996年~2010年代前半生まれ)の時代になると、不動産を所有することにあまり価値を見出すことなく、シェアリングしていけばよいと考えるようにもなっていくでしょう。
不動産を取り巻く悲しい現実
相続が家族の系譜という線上で受け継がれていくという考え方が変わらない限り、今私たちが気を付けるべきことは、いらない資産は何かということです。現金が欲しいという人はたくさんいるでしょう。ここまでは簡単です。しかし、親が建てた家や先祖代々の実家、古びた別荘、老朽化したマンションといった不動産はどうでしょうか。これらの資産もすべて「家族」という脈々と続く系譜の中で継承されていくものなのです。
戦後まもなくから高度経済成長期にかけて、地方では親の家は長男が継ぎ、長女や次男たちは東京や大阪の大都市にやってきて、専業主婦やサラリーマンとなって新たに家を構えました。そして地方の実家に戻ることはなくなりました。また地方に残った長男の家で育った子供も親の仕事を継承せずに都会に出てきて就職を始めました。現代では男も女も都会に出て、その多くが会社組織に属して働き、都市部で新たに家を構えています。
地方の家の価値は下がり続け、残念なことに、大都市に出てきて一生懸命働いて建てた郊外の一軒家も、彼らの子供は見向きもせず、老朽化したマンションに住むつもりもない。これが現在、相続を取りまく家族絵図なのです。
これから起こる相続の多くはかなり悩ましいものとなります。変な不動産をつかむと、その管理や処分で苦労することになるからです。親や祖父母の時代では思ってもみなかった価値観の変化が、これからの相続では起こってきます。
相続対策が支える不動産膨張マーケット
不動産は相続対策の王道として、アパート投資あるいはタワマン投資を誘発し、その結果として不動産マーケットにずいぶんと恩恵を施してきました。いっぽうで、その効果を妄信するあまりに行き過ぎた投資をする、身分不相応な借金を背負うことは、後代に禍根を残すような結果を招きます。