「おみやげ算」が、算数嫌いを克服する一助に

──私も超文系なのですが、おみやげ算ができるようになったらすごい武器を手に入れた気分になりました。今、算数や数学を苦手だと思っている人も、本書でおみやげ算ができるようになったら少し算数が好きになれるのでは、と感じています。

小杉:そうですね。やはりできなかったことができるようになるのは、自信につながるのではないでしょうか。ですから、「もっと他の計算もしてみたい」と積極性が増す子もいるでしょうし、「算数なんか嫌い、数字も見たくない」といった子でも、他の子ができない計算方法をマスターすることで算数嫌いを克服するきっかけになる可能性もあると思います。

それに、子どもの場合、「2桁どうしの暗算ができるなんて、かっこいい!」というシンプルな感情から、計算が得意になるきっかけになることもあります。あるお母さんからの感想で「小学生の娘が、この本でおみやげ算をできるようになったことを『お父さんに自慢したい!』となり、帰宅したお父さんに報告してとても喜んでいた」といった感想をいただきました。その様子が目に浮かんできて微笑ましかったですね。

公立の小学校では習わないおみやげ算。学校でどう使う?

──おみやげ算は非常に便利な計算方法ですが、なぜ学校では教えていないのでしょうか。

小杉:一つは、あまり知られてこなかった計算方法だからです。公立の小学校では約10年に1回改訂される学習指導要領という指針をもとに、教科書が作られます。算数の教科書は、すでに相当の学習量が収録されているので、そこにすぐおみやげ算が加わることは、現実的には考えにくいと思います。そして、教科書に載っていないことを積極的に教える先生は少数派だと思いますので、公立の小学校でおみやげ算を教えるのは、まだ先のことではないでしょうか。でも、私立の小学校は、教材の採択が自由なので、すでに教えているところもあると思います。

──SNSで、「学校のテストで『決まった解き方をしていないから』と、答えが合っていてもバツにされた」といった投稿を見かけることがあります。そういった状況もある中で、まだ小学校教育に組み込まれていないおみやげ算を、学校ではどう活用したらいいのでしょうか?

小杉:「決まった方法で解かないとバツ」というのは、すべての先生が行なっているわけではなく、個々の先生で差が出るところです。例えば、公立小学校のテストで「17×15」を筆算で解きなさい、という指定があったとしましょう。そのとき、ある生徒が、筆算の途中過程を書かず、答えだけを書いた場合、バツか三角にする先生はいると思います。

ただし、「17×15を(筆算しなさいという明記がなく)計算しなさい」という問題で、「答えの255だけ書いたらバツにされた」という事例がもしあれば、これは少々理不尽です。「17×15を計算しなさい」というだけの指定という問題なら、筆算で解こうが、おみやげ算で解こうがマルをつけるべきだと個人的には思います。

もし、お子さんが理不尽な理由で、バツやサンカクをつけられた場合、返却されたテストをみて、親が「バツになっているけど、あなたのやり方でいいんだよ」とフォローするのがよいでしょう。

また、ケースバイケースですが、テストで「筆算しなさい」という指定があったときは筆算し、その指定がないときは、おみやげ算で解くのもひとつの方法です。どうするのがベストかは、状況に合わせてお子さんに伝えていただくのがいいでしょう。結果的に、お子さんの納得する方法を話し合っていただければと思います。

【大好評連載】
第1回 【大反響の算数ドリル】17×18を5秒で暗算できる!話題の「19×19までの暗算法」とは?
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たった1日で11×11から19×19の暗算ができるようになる!「子どもの算数嫌いを克服する」すごい本の秘密【著者】小杉拓也(こすぎ・たくや)
東京大学経済学部卒。プロ算数講師。志進ゼミナール塾長。プロ家庭教師、SAPIXグループの個別指導塾の塾講師など20年以上の豊富な指導経験があり、常にキャンセル待ちの出る人気講師として活躍している。現在は、学習塾「志進ゼミナール」を運営し、小学生から高校生に指導を行っている。毎年難関校に合格者を輩出している。算数が苦手な生徒の偏差値を45から65に上げて第一志望校に合格させるなど、着実に学力を伸ばす指導に定評がある。暗算法の開発や研究にも力を入れている。ずっと算数や数学を得意にしていたわけではなく、中学3年生の試験では、学年で下から3番目の成績だった。数学の難しい問題集を解いても成績が上がらなかったので、教科書を使って基礎固めに力を入れたところ、成績が伸び始める。その後、急激に成績が伸び、塾にほとんど通わず、東大と早稲田大の現役合格を達成する。この経験から、「基本に立ち返って、深く学習することの大切さ」を学び、それを日々の生徒の指導に活かしている。著書は『ビジネスで差がつく計算力の鍛え方』『この1冊で一気におさらい! 小中学校9年分の算数・数学がわかる本』(ともにダイヤモンド社)、『改訂版 小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『増補改訂版 小学校6年分の算数が教えられるほどよくわかる』(ベレ出版)など多数。

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