中学受験生に怒涛の勢いで広がっている「11×11から19×19の暗算法」とは?Photo: Adobe Stock

1点の差が命運を分ける、中学受験。親としても「ぜひ受かってほしい」と切実に願っていることでしょう。そんな中学受験生を持つ親の間で、話題になっている本があります。それは、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』です。本書では、11×11から19×19の暗算ができる「おみやげ算」という方法を紹介しています。このおみやげ算を身につけることが、中学受験にどのように役立つのか。著者である東大卒プロ算数講師の小杉拓也氏に、詳しくお話を聞きました。(取材・構成/神代裕子)

1分1秒を争う中学受験で「おみやげ算」が力を発揮!

──「おみやげ算」は、11×11から19×19の暗算ができるとのことですが、例えば「16×13」はどのように計算するのか教えてください。

小杉拓也(以下、小杉):次の2ステップで計算できます。

①16×13の右の「13の一の位の3」をおみやげとして、左の16に渡します。すると、16×13が、(16+3)×(13-3)=19×10(=190)になります。

②その190に、「16の一の位の6」と「おみやげの3」をかけた18をたした208が答えです。
まとめると、16×13=(16+3)×(13-3)+6×3=190+18=208です。

この方法で、「十の位が1の2桁の数どうしのかけ算」はすべて計算でき、慣れると暗算でもできるようになります。

──表紙に「中学受験、脳トレにも!」と書かれていますが、中学受験生にもおみやげ算は役に立つのでしょうか。

小杉:はい。中学受験は1分1秒を争い、1点差で合否が決まります。そのため、筆算よりも速く解けるおみやげ算を身につけることで、よりスピードや競争力をつけることができると考えています。

ですから、中学受験生の親御さんからのうれしい反響がとても多いです。「いい本を見つけた!」と、SNSやブログなどで拡散していただけることもありがたいです。

おみやげ算の習得が、心理的優位性につながることも

──中学受験において、おみやげ算を身につけることが有利になる点は他にもありますか?

小杉:おみやげ算を習得することは、「心理的優位性」を身につけることにつながることもあると思っています。受験とは「己との戦い」であり、心理戦の要素は少ないと思う方もいるかもしれません。しかし、心理戦とまではいかなくても、受験中の精神状態を良い状態に保つことは、好結果を出すためには重要です。焦ったり気持ちが緩んだりすると、ミスにつながることもあるからです。試験は平常心、もしくは程よい緊張感を持って臨む必要がありますが、不安や焦りで良い精神状態をキープできないこともあります。でも、ちょっとしたことがきっかけで、平常心を取り戻すこともある。そういう点から「私はおみやげ算をマスターしているんだ」という自負が、心理的に有利に働く可能性があります。

おみやげ算は短期間でマスターできます。ですから、例えば、受験の直前期に11×11から19×19の暗算ができるようになることは、「直前だけど自分の武器が増えた!」と自信になることがあるかもしれません。また、試験で11×11から19×19の計算が出てきた時に「この計算でおみやげ算が使える!」と前向きな気持ちになることもあると思います。

──実際、中学受験をしたお子さんから「おみやげ算を覚えていてよかった」「役に立ったよ」といった話を聞いたことはありますか?

小杉:1回の算数の試験で複数回おみやげ算を使えた子がいました。受験は「解ける問題はできる限り解いて、少しでも余った時間は見直しに使う」という、時間との戦いです。だから「プラスになってよかったね」と話したことはあります。