クレディ・スイスの「AT1債」無価値化に怨嗟の声、それでも三井住友FGが発行に踏み切った理由Photo by Satoru Okada,Mieko Arai

スイスの金融大手クレディ・スイス・グループが同国政府主導でUBSに買収されたため「AT1債」が無価値化し、世界の債券市場を動揺させた。国内でも1400億円が販売され、著名人を含む投資家から怨嗟の声が上がる。そんな中、三井住友フィナンシャルグループは自社のAT1債の発行に踏み切った。金融市場の正常化のサインとなり得るのだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

金融のプロから駅伝の名監督まで受けた衝撃
三菱モルスタ証券は950億円を販売

「ある種詐欺ですよ、こういうことが起こったら」――。箱根駅伝で2015年以降の4連覇などの実績で知られる青山学院大学駅伝部の原晋監督は、インターネット番組「ABEMAヒルズ」でこう述べ、怒りをあらわにした。

 リスク商品に損失は付き物であるが、クレディ・スイス・グループが3月にUBSに買収され、クレディの株式は一定の価値が維持されたのに対し、AT1債が“債券”であるにもかかわらず無価値となった事実は、プロ中のプロである国内外の機関投資家にも、この債券を実際に購入していたという原監督が受けたのと同様の強い衝撃を与えた。

 金融庁によると、無価値となったクレディのAT1債2.3兆円のうち、国内で販売されたクレディのAT1債は約1400億円。このうち約950億円を三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)が販売していた。

 一方で三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、自社のAT1債1400億円分を発行すると4月19日に決定。今後のAT1債市場、引いては金融市場の方向性を占うとして注目を集めた。クレディとSMFGでは何が違うのか。そして、市場はどのように反応したのだろうか。