桜が満開の日本を、大型バイクでツーリング旅

 そこに流れてきて驚いたのが、この動画だ。

movie by bigboysclub8hk

 桜が満開の日本を、重装備のバイクで疾走していく男たち……たとえ直接それを目にしても、まさかこれがアジアからの観光客たちだと気付く人はほとんどいないだろう。

 実はこれ、筆者の友人の香港人ファンさんとその友人たちが日本旅行をしたときの思い出動画である。アメカジファッションとビンテージバイクが大好きな彼が同好の士たちと作った「Big Boys Club」というグループで、彼らは普段、香港では週末ごとに愛車を走らせて朝食を食べに行ったりしているらしい。

 昨年秋、海外から香港入りする際に義務付けられていたホテル強制隔離措置がそろそろ撤廃されそうだという情報が駆け巡った頃から、彼らの日本ツーリング計画が始まった。そしてお互いの休みの都合を調整した結果、今年の3月末に決行することに。それが桜の時期と重なったのは「完全に偶然のたまものだった」という。

 参加したクラブメンバーは18人、日本入りしてからバイク14台をレンタルした。「こだわりのあるバイクは高額だから、外国人が10台以上もレンタルするとなるといろいろ面倒じゃなかった?」と尋ねたら、実は日本には全国に支店を持つ、外国人客向けのバイクのレンタルサービスがあるのだという。メンバーの一人がそのオーナーと懇意にしていることもあり、レンタルは非常にスムーズに進んだらしい。それに加えて、一部メンバーの同行家族や荷物を載せるために3台の車を用意して、4日間かけて東京から草津、長野を巡る大ツーリングとなった。

「バイク店の店主の息子さんがルートを決めて、ナビゲートしてくれたのもありがたかった。以前も日本でツーリングしたことはあるけど、グーグルマップ頼りだとどうしても目的地まで直線距離を走ることになる。でも、今回はさすがに道をよく知るバイク野郎が計画しただけあって、日本の農村の中を走ったり、桜を存分に楽しめる道を選んだりと、風景をじっくり堪能しながら走れたから、ものすごく満足した旅になった」

 そして、それがメンバーの一人であるプロのカメラマンによって撮影され、前掲のようなビデオになった。ファンさんによると、バイク旅の醍醐味は車よりも歩いている感覚に近いのだそうだ。

「車と違ってバイクは直接その空気に触れることができるし、身体にも生に道路からの振動が伝わってくる。その土地のムードに包まれた気分は最高だった」

「十何台もの大型バイクのツーリングは、田舎の人たちをびっくりさせたでしょう?」と尋ねると、「みんな笑顔で見てたよ。子どもたちが手を振ってくれたりして、それも楽しい思い出の一つだ」とのこと。さらに事前に準備したBluetooth接続のインカムをメンバー全員が付け、バイクを走らせながらお互いコミュニケーションできるようにしたため、他のメンバーが景色に上げる歓声もたっぷり伝わってきて、一体感も高まったという。話を聞いていて、こちら側も楽しくなった。飛行機代や前後の延泊費用を除くと、4日間のツーリング費用は1人平均1万香港ドル(約17万円)だったそうだ。

 これから次第に日本にも外国人観光客が戻ってくる。こうしたさまざまな楽しみ方を心得た外国人観光客に、日本はどんな魅力を伝えられるのか。日本の観光業界にはさらに知恵を絞っての開拓を期待したいものだ。