本国の家族からのリクエストで
兵士にバースデーケーキを渡す理由

 USOには「オペレーションバースデーケーキ」というプログラムがある。本国にいる家族のリクエストを受けて、ご家族に変わってサプライズのバースデーケーキを職場まで配達するオペレーションだ。バースデーに仕事があり、受け取れない場合はその日の前後に渡すことになっている。

 なぜこのようなプログラムがあるのか。

 USOセンター所長のフィル・バンエッテン氏は「危険な場所に行くこともある海兵隊員に対し、家族からの愛を伝える仕事をすることがUSOの使命だからだ」と話す。

 あるとき、ネパールに派遣されることが決まっている海兵隊員の母親からサプライズケーキの依頼があった。そこで、USOの職員が誕生日の3日前にケーキを渡した。彼は本国の母親からのケーキをとても喜んで、ネパールに旅立った。

 しかし、彼はネパールで命を落としてしまい、皆が悲しみにくれた。ただ、「彼が生きている間に、母親からの愛を渡すことができた。そのことを誇りに思っている」とフィル氏は取材で語ってくれた。

 USOは、軍に認められた任意団体として、軍人が遠隔地や基地でも安心して働けるようにするため活動している。軍人とその家族へのサポートを通じて、彼らが世界中のどこにいても、国や家族とつながっているという安心感を提供することを目的としている。

 その活動の根底には、軍人を尊敬し大切にしようとする姿勢が米国国民全体にあるのだと感じた。

 自衛隊は日本の防衛の要として大切な存在であるはずだ。しかし、その職責に見合った待遇を与えられていないため、深刻な人材不足により破綻寸前である。それに対して今回取材したUSOでは、軍人に惜しみないサポートを提供することで、魅力的な職場環境作りを徹底していた。そういった努力が人材確保にもつながっている。まさに今の自衛隊と対照的な存在だ。

 さて、あなたは自衛隊と在日米軍のどちらの職場で働きたいと思うだろうか?

 その答えが自衛隊の人材不足解決への大きな一歩となるはずだ。

(国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表 小笠原理恵)