地元企業を選定することで
地域の活性化を目指す

 米子市の公共下水道事業は1974年供用開始の内浜処理場、1980年供用開始の皆生処理場、2000年供用開始の淀江浄化センターと中継ポンプ場などから構成されており、市内約3.8万戸、計13万人以上の汚水を処理している。

内浜処理場全景(筆者撮影)内浜処理場全景(筆者撮影)

 しかし内浜処理場と1972年供用開始の中央ポンプ場は老朽化で不具合が増加しており、ゲリラ豪雨や地震など災害リスクへの備えも不足している。今後の人口減少を踏まえ、設備の集約とダウンサイジング化を含めた施設の更新が必要だが、現在の体制では十分な対応が困難だった。

 そこで米子市は民間のノウハウや創意工夫、業務効率化を目的とした性能発注方式による包括的民間委託の導入を決定し、公募を開始。これに後藤工業とクボタ環境エンジニアリング、東芝インフラシステムズのJVが応募した。

 既設の設備を納入した東芝と提携先のクボタが専門技術、後藤工業が維持運営を分担。そのために同社は、それまで運転維持管理業務を受託してきた一般財団法人米子市生活環境公社の社員42人を引き継ぎ、彼らがそのまま業務に当たる。

 JVのコンセプトは「がいな縁」だ。「がいな」とは「大きい」を意味する米子の方言で、地元の人材や企業と連携して持続可能な管理体制を構築し、米子の発展に寄与したいという考えである。

 というのも県外の事業者が包括契約を締結した場合、メーカーが系列企業に業務を委託し、地域の産業が空洞化する例が少なくない。そこでJR西日本のグループ会社でありながら、地元企業でもある後藤工業が事業を受託し、再委託先もできるだけ地元企業を選定することで、地域の活性化を目指したいというのだ。

 今回の受託期間は2025年度までの3年間で、設備更新などは対象に含まれていない。また安定性・持続性のある下水道事業は安定的な売り上げが期待できる一方で、現時点では営利事業とは位置付けておらず、雇用の確保やノウハウの蓄積が主眼にあるようだ。後藤工業は今後、代表企業として単独の受託も視野に、新たな契約の締結を目指していく。