下水道の管理業務における
後藤工業の強みとは

 では後藤工業の強みとは何なのか。同社の外部進出の中核となるのが機械部だ。公社から引き継いだ社員を除く約200人の社員のうち、車両部が約150人を占める。一方、機械部は管理職含め13人と、7%にも満たないが、全社売り上げの2割以上を占めている。

 実は機械部は1984年から下水処理関係工事の入札指名業者として、内浜処理場の機械設備修繕工事などを請け負ってきた実績があり、その他にも動力プレス機の検査など外部の検査業務を受注。下水道事業の技術関係を担うのも機械部だ。

 後藤工業の強みはJRの仕事を受託する中で培った、見積もりから設計、施工まで一貫して対応できる技術力だ。また鉄道車両工場にはクレーンなどの運搬機器、試験機器、排水ポンプなどの産業用機械があり、この検査・修繕業務を担っているということは、各種の機械に対応可能であることを意味する。

 加えて事故やトラブルに備えた即応体制があり、地元企業とのつながりを生かしたタイムリーな対応も可能。つまり、安心して任せられる「なんでも屋」なのである。

 鉄道技術の外部への展開というと、前回の記事で取り上げたJR西日本テクノスの家具製造など、製造・修繕技術の直接的な活用が注目されがちだが、実はこうしたノウハウの蓄積も他業種には見られない優位点である。

 もっとも実際には、処理場に設置された機械には取り扱ったことのないものも多くあったという。今後はメーカー以外では対応できない設備を除き、全ての機械に対処できる体制を構築する意気込みであり、その先にはさらなる技術とノウハウの蓄積が期待できる。

 JRの現業部門、関連会社には地元採用中心の地域に密着したものが多い。JR西日本と後藤工業の取り組みは、鉄道がさまざまな形で地域に貢献できる可能性を秘めていることを示している。