自民党にお株を奪われた左派野党の
存在意義は“消滅”

 また、岸田政権は「異次元の少子化対策」を打ち出している(第323回)。(1)児童手当を中心とする経済的支援の強化、(2)幼児教育や保育サービスの支援拡充、(3)働き方改革の推進――の三本柱を「異次元」の予算規模で実行するものだ。

 さらに、岸田政権は国民が苦しむ物価高への対処などを盛り込んだ経済対策を次々と打ち出している。

 いわば、所得の高低を問わず、国民の生活を安定させるような方針をとっているのだ。こうなっては、左派野党もお株を奪われたも同然だ。

 その結果、国民の目は「政府は次に何をしてくれるか」に集中するようになり、実際に予算を扱えない野党の存在感は薄れてしまった。

 これは「包括政党(キャッチ・オール・パーティー)」という特徴を持つ自民党のなせる技である(第169回・p3)。

 自民党は国民のニーズに幅広く対応できる、政策的にはなんでもありの政党だ。

 野党との違いを明確にするのではなく、「野党と似た政策に予算をつけて実行し、野党の存在を消してしまう」というのが、自民党の伝統的な戦い方である。

 安倍政権以降、その特徴がいかんなく発揮された結果、左派野党は存在意義を消された。

 左派野党が「弱者救済」を訴えれば、自民党は「野党の皆さんもおっしゃっているので」と、躊躇(ちゅうちょ)なく予算をつけて実行できる。その場合、もちろん自民党の実績となる。

 これまで述べてきた経緯によって、左派野党は「自民党の補完勢力」になり下がってしまった。それが、統一地方選で、左派野党が衰退した本質的な理由ではないだろうか。

 一方、維新の台頭はどう理解すればいいのか。実はこれも、他の野党が「自民党の補完勢力」と化したことで起きている現象だといえよう。