今後の政局における
「真の対立軸」とは?
本連載で繰り返し指摘してきた通り、現在の政治の対立軸は「保守vs革新(リベラル)」ではなく、「社会安定党vsデジタル・イノベーション党」になりつつある(第294回)。
「社会安定党」とは、自民党・公明党の連立与党を、立憲民主党・社民党・共産党・れいわ新選組が補完するグループだ。
このグループが打ち出す政策は、以下の通りである。
・弱者、高齢者、マイノリティー、女性の権利向上
・同一労働同一賃金、男女の賃金格差解消などの雇用政策
・外国人労働者の拡大や、斜陽産業の利益を守る公共事業の推進
・社会保障や福祉の拡充、教育無償化
いずれも前述の通り、「格差解消」などの社会民主主義的な要素が含まれた政策である。既存の与野党の枠を超え、今後は同グループが「実質的与党」となっていくだろう。
与野党の政策が一致する現象は、1960~70年代の英国で保守党・労働党が政権交代を繰り返しても、福祉サービスの充実度が変わらなかった「コンセンサス政治」に似ている。
歴史をひもとくと、保守党は貴族・富豪・地主などの支持で成立した経緯がある。その影響から、保守党が格差是正に取り組む際は「貧しきものに富を分け与える」という思想が根底にある。
一方、労働党はその名の通り、労働者階級にルーツを持つ政党である。そのため、格差是正に取り組む際は「労働者の権利拡大」が主な目的になる。
一見すると似たような「格差解消」に取り組んでいても、政党の由来や支持基盤の違いによって、背景にある思想も異なってくるのだ。
国内政治に話を戻すと、実質的与党となる「社会安定党」への対抗勢力はもはや政党ではなく、「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする人たちの集団」と化している。
具体的には、SNSで活動する個人、起業家、スタートアップ企業・IT企業のメンバーなどだ。筆者がこの集団を「デジタル・イノベーション党」と呼んでいるのはそのためである。
彼らは政治への関心が薄い。「勝ち組」を目指す人たちにとって、社会民主主義的な「格差是正」「富の再分配」は逆効果になるからだ。
彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパーグローバリゼーション(第249回・p2)を進めることである。
そして彼らは、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。その支持政党が「野党」となる。