自民党に満足できない層を
維新が取り込んだ
現在、「デジタル・イノベーション党」の全面的な支持を勝ち取れる政党は日本には存在しない。だが今回の地方選で、その一部が維新に投票した可能性は大いにある。
確かに自民党は「デジタル庁」を立ち上げて、マイナンバーカード関連をはじめとするデジタル政策を推進してきた。
だが、新型コロナウイルス感染拡大を機に露呈したとおり、日本のデジタル化は他の先進国よりも相当に遅れている。
その水準は「デジタル・イノベーション党」の面々が到底満足できるものではない。科学技術への投資やスタートアップ支援においても同じだ(第312回)。
筆者は本連載で、こうした自民党の政策の問題点を「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だと批判してきた。
そのため昨今は、自民党の政治に満足できない層が、都市部に少しずつ現れてきた。
この層の中には、「デジタル・イノベーション党」のメンバーだけでなく、従来は政治に無関心で意思表示をしてこなかった「サイレントマジョリティー」も含まれるだろう。
彼らの投票行動が、今回の維新の台頭につながっている――。そう考えると合点がいく。
ただし、維新が現在の勢いを何年も継続できるかは微妙なところだ。
躍進遂げた維新だが
今のままでは頭打ち!?
今のところ、維新の全国政党としてのアピールは、自民党よりもラディカル(急進的)な「憲法改正」や「安全保障政策」などが中心だ。改革の中身も、地方分権・行政改革・規制緩和という「90年代っぽさ」「古さ」を感じさせるものである。
自民党に不満を持つ層を取り込む戦略なのだろうが、このままでは、いずれどこかで頭打ちになってしまう。
「維新の皆さんもおっしゃっているので」と、何らかの政策を自民党に取り入れられてしまえば、「実質的与党」の仲間入りである。
さらに、自民党の側も「Too Little」「Too Late」「Too Old」な体制から脱却すべく、すでに動き出しつつある。