(1)立候補するための提出書類をCD-ROMで渡された

 選挙に立候補するためにはいろいろな書類を提出する必要があるのですが、それをCD-ROMで渡され、面食らいました。CD-ROMが読み取れるパソコンなんて持っていないので、外付けドライブを3000円で購入して、データ入力しプリントアウトして提出。

 大して大きなデータでもないので、メールや、クラウドサーバーに置いたデータを各自ダウンロードするとかでもいいんじゃないかと思います。

(2)ポスターの掲示位置は抽選で決まり、一番上は大変

 ポスターの掲示位置は抽選で決まります。掲示板の上のほうが当たると大変。特に一番上になってしまうと、脚立がないと手が届かず貼れません。

 渋谷区には掲示板が約250カ所あり、半数以上は脚立が必要な高さに掲示板がありました。脚立がなければ自転車でスイスイポスターを貼って回れますが、脚立があると車移動が必須になります。掲示位置が上部か下部かで、かかる時間が5倍は違います。

ポスターを貼る筆者(筆者提供)ポスターを貼る筆者(筆者提供)

(3)30万円あれば立候補できる

「選挙ってお金がかかるんでしょう?」というイメージを持つ人は多いと思います。今回、区議選にかかった費用は供託金の30万円だけでした。それ以外は不要です。ちなみに、区長への立候補の供託金は100万円、都県議は60万円です。

 しかも供託金は一定の得票があれば戻ってきます。選挙ポスターもチラシも、一定の得票があれば公費負担です(枚数上限などはあります)。一定の得票とは「有効投票総数÷議員定数×1/10」です。今回の渋谷区議選では225票以上の得票があれば公費負担となります。なお、今回、当選者のボーダーラインは1227票でした。

(4)選挙カーを使う本当の目的

 選挙カーは何のためにやっているのか。「あんなのうるさいだけだ。名前を聞いたからって、それだけで投票することはない」というのが大多数の人の感覚ではないでしょうか。私もそう思っていました。

 立候補者もそれは分かっています。ではなぜか? そもそも主たるターゲットは、浮動票ではないのです。4年かけてコミュニケーションを取り、関係を培ってきた、支持者や団体のためです。彼らに自分を思い出してもらうため、決意や意欲を改めて伝えるために選挙カーを走らせ、名前を連呼しているのです。

 そして、この選挙カーも、得票数が一定以上であれば公費負担になります。ですので、組織票を持つ候補者や再選可能性が見込める現職議員にとっては、使わない手はないわけです。私は今回、もちろん選挙カーは使っていません。ちょっとやってみたかったですけど。

(5)立候補の反響がスゴイ

 立候補をすると、ものすごく反響があります。想像以上でした。単純に「人があまりやらないことをやる」ということの価値はやはり大きいのでしょう。「自治体はIPで稼ぐべき」という意見への反響も大きく、うれしかったです。

 あとは、「権威」への関心が高いということなのかもしれません。実際のところ、区議にどれほどの権威があるのかは分からないのですが、私の過去の「珍しい行動」への反響に比べると、ずっと多くの反響がありました。これはおそらく権威に対する関心なのだと思います。

(6)組織票のない無所属新人は当選しない

 知名度のある有名人は別ですが、無所属新人は当選しません。理由は投票率です。区議選の投票率は40%前後。渋谷区の有権者は約18.6万人。有効投票総数は約7.6万票でした。このうちの大半が組織票になります。組織票が悪いとは思いませんが、選挙に当選して議員という仕事をするためには、組織票を持つ政党・団体の公認・推薦を受けるか、地道に地盤となる自分の組織を作っていくしかありません。

 この「票を持つ団体との関わり」か「地盤作り」が議員にとって大切な「業務」になります。投票率が低いということは、「団体の影響力が大きくなる→議員は団体を重視する→一部団体の意思が地域に作用しやすくなる→団体の影響力がますます大きくなる」ということになります。団体は議員とのつながり自体が目的化していくことも多いですから、現職が有利になります。無所属の場合は、4年間かけて選挙区内の団体と親密なコミュニケーションを取っていく必要があります。