とはいえ、無鉄砲な私の立候補に対して、「自分は区民じゃないけど、早く言ってくれれば渋谷区の知り合いを動かせたのに」という連絡をたくさんもらいました。また、私の知人で区内に住んでいる人は数えるほどしかいませんが、他の区市町村にならたくさん住んでいます。上に書いたことと矛盾するようですが、「もし私の仲間が各自治体で立候補し、互いの友人知人をシェアし合えば、それなりに得票できるかも」と思いました。そして「これが、政党とか団体なんだな」と当たり前のことに気付きました。

 私は、いちクリエイターでありビジネスパーソンです。「クリエイティブ的発想とビジネス思考が自治体運営には必要」と思い、「その考え方を多くの人に知ってもらう」という目的で立候補しましたが、強い政治信条があるわけではありません。政党にも所属していないし、「議員になること」や「議席を取ること」自体に目的意識はありません。それでも、ビジネスパーソンの集合体が組成されて、兼職議員を増やすことができたら、世の中の役に立ち、社会が少し変わるかも? と思うようになりました。

(7)「ビジネスパーソンの兼業議員」はもっと増えたほうがいい

 現在、日本の地方議員で専業の人は47.4%。半分以上の地方議員は、他に仕事を持つ兼業議員となりますが、都市部では少ないようです。

 私は、ビジネスパーソンの兼職議員がもっと多くなるといいと思っています。ビジネスの現場でバリバリ働いている人が議員になれば、互いの情報が早くたくさん正しく伝わるようになり、あらゆるムダが解消されていくでしょう。必要な情報が必要な人にシェアされていきます。

 渋谷区議の年収は約900万円です。様々な活動費もこの900万円の中で賄うので、優秀な方にとっては、金銭的な魅力は少ないかもしれません。ただ、議会の会期は年間100日未満のところが多いようです(自治体によって違います)。それも丸一日拘束されるわけではありません。もちろん他の各種委員会などもあるので、議会にだけ出席していればいいわけではありませんが、兼業での議員活動なら報酬的には魅力的だと思います。副業・兼業が当たり前になりつつあります。また、企業側も、一部の社員が自治体の議員であることはメリットがあるでしょう。

 地方議員の兼業には、実は国も前向きです。自治体と継続的な取引がある個人事業主について、年間取引額が300万円までなら兼業を認める法律が今年3月に施行されました。また、議員が役員を務める会社が、当該自治体から仕事を受託することも可能です。一定の条件はありますが、判例では、会社の売上全体のうち当該自治体からのものが4分の1未満程度であれば問題ないようです。これは私には驚きでしたが、このことを多くの人が知ると、兼職議員を考える人も増えると思います。