日常会話やメール、文書、プレゼン……自分の伝えたいことがうまく伝わらない、と思うことはないだろうか。そんな人にぜひ読んでほしいのが、『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(坂本和加著)だ。著者の坂本氏は「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」など数々の名コピー、ネーミングを生み出している。本書では、坂本氏が20年以上のキャリアで身につけた、「伝える」ための思考法、技術を余すところなく紹介。今回は本書の発売を記念して特別に一部内容を再編集、抜粋して紹介する。(初出:2023年5月6日)

「影響力のある言葉」に共通するたった1つの特徴とは?【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

共感ではなく、「共鳴」を生み出す

私は仕事でもワークショップのときでも、共感ではなく、「共鳴する言葉」をつくりましょう、とみなさんに伝えています。

共感と共鳴、とてもよく似ていますが2つはまったくちがう言葉です。

共感は、感情の共有です。「いいね!」と、同じように思うことです。

一方、共鳴は、自分ではない他者の考えや行動に対して、「いいね!」をすることです。

同じ「いいね!」ですが、軸のある場所がちがうのです。

「こたつに入って食べるのは、やっぱりみかんだよね」と発信したとします。
「そうだよね、やっぱりみかんだよね」と思う人もいれば、「いや、こたつに入ってアイスを食べるのが最高でしょ!」と思う人もいる。

今、時代は多様性です。共感する言葉を目指しても、「私はそう思わない」と堂々と言う人が、たくさんいておかしくない時代なのです。

だからこそ、「共鳴」が大事なのです。

共鳴は「他者の考え方や行動」に「いいね!」をすることです。やっていることが素敵だね、と思うのが共鳴です。

善し悪しの軸は、世の中ではなく、発信者にあります。

共鳴できる言葉は、「この指とまれ!」の言葉です。

企業スローガンには強い意志を感じるものが多くあります。

「そうすることに決めた!」と企業が宣言しているからです。

共鳴は、生活者が「そんなあなたを応援するって決めた!」というもの。

まさに「その指とまった!」ということなので、ファンづくりにつながる言葉なのです。

共鳴されるひとことは、ファンを生む

「この指とまれ!」にとまった人は、ずっととまっている現象が起きます。ファンになるということです。

ひとたびいいなと思ったら、人はそうそう嫌いにはなりません。

ピンチのときに助けてくれたり、味方になったりもしてくれます。

考え方や行動そのものに好感を持ってくれているからです。

共鳴軸は宣言、宣言は約束事なので、約束をちゃんと守っている(行動に移している)間はしっかり応援してくれます。

ブランドとはそうやってできていくものです。

志を言葉にしよう

共鳴されるひとことは企業でなくても誰でも持つことができます。

ちなみに我が家の家訓は「来たときよりも美しく」です。

出かけた先では来たときよりキレイにして帰ろう! という意味で使っています。

さらに、振り返りの習慣をつくるために「見返り美人した?」と声がけしています。

みなさんもぜひ、志、ハートを言葉にしましょう。

自分たちの活動への思いをひとことにできたら、SNSや仲間を新たに募るとき、ウェブサイトや名刺などに入れてアチコチで使えます。

どんどん伝えて、好きになってもらいましょう。

(*本稿は『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』より一部抜粋、再編集したものです)

坂本和加(さかもと・わか)
合同会社コトリ社代表
文案家(コピーライター)/クリエイティブディレクター
大学を卒業後、就職氷河期に貿易商社へ入社。幼少期から「書くことを仕事にしたい」という漠然とした思いがあり、1998年にコピーライターに転職。数社の広告制作会社を経て、2003年に一倉広告制作所に就職。2016年に独立し、現在は合同会社コトリ社代表。
主な仕事に、「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」「イット!」「健康にアイデアを」「こくご、さんすう、りか、せかい。」などがある。受賞歴に毎日広告デザイン賞最高賞ほか多数。著書に『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(ダイヤモンド社)、『あしたは80パーセント晴れでしょう』(リトルモア)ほか。東京コピーライターズクラブ会員。日本ネーミング協会会員。