日本でDXがうまくいかない理由

――なぜ、日本企業は「デザイン思考」を持つことができないのでしょうか。

 日本の大企業は階層構造なので、何かをやろうとすると、社内手続きの中で資料が独り歩きすることになる。でもデザイン思考のアイデアって、最近でいうとNotion(メモアプリ)のメモ書き程度のものなので、分かる人は分かるし、分からない人は分からない。

 そんな抽象的なものを資料にしたら、「こいつ大丈夫か」って思われる。なので、ロジカル思考で作られた資料は、階層化された組織でも比較的通りやすいのに対し、デザイン思考型の提案は通りにくいんです。

写真:松本勝氏,日本でDXが上手くいかない理由?Photo by T.K.

 でも、人が物を買いたい、使いたいと思うのは、ロジカル思考で正しいからじゃないんです。こういうコストで原価率何パーセントだから、この価格で買うべきなんですって言われても、そんなの関係ない。買いたいかどうかは、ユーザーの勝手でしょって、消費者は思っている。なので正しいことは顧客が納得する説明ファクターの一つにすぎなくて、最終的にはその商品の世界観に共感したとか、全然違う理由で人は購買活動をするわけです。

 そういった意味では、市場を作っている顧客の気持ちを第一に考えるデザイン思考が本来は重要なはずです。もちろんロジカルに正しいかどうかは重要ですけど、原価率や利益管理がどうというのは、あくまでデザイン思考の後の問題です。

 シリコンバレーなどでは、いいアイデアが思いついたらとりあえずやっちゃえ、という文化があります。やりながら、課題があったら修正をしたりするんですけど。日本の場合は、まず社内で十分にリスクを検討して、やめておこうみたいになっているアイデアって多いと思います。

 日本では、新規事業に失敗することが、経営者や管理職にマイナスの評価を与えてしまうからです。これがまさに日本の悪いところで、失敗しないようにああでもない、こうでもないと議論を延々としているうちに、どんどん欧米に置いていかれて、何もできないまま終わっちゃう。

「デザイン思考」でROIが18倍に

――松本さんの会社では、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。

 事業としては大きく2つやっておりまして、デザイン思考テストが組み込まれたDX人材の採用と育成支援のクラウドサービス、もう一つは、VISITS formsという意思決定支援ツールです。

 どちらも弊社が開発した、意見やアイデアの価値を数値化する合意形成アルゴリズム「CI技術(日米特許取得)」を活用したプロダクトです。

 まずデザイン思考テストや、デザイン思考トレーニングプログラムっていうのがあるんですけど、これはあくまで個人の創造性を鍛えたり測ったりするもので、さまざまなメソッドをフレームワーク化しているので、企業や学生の皆さんに教育プログラムとして提供しています。創造性は鍛えていけばどんどん上がっていきます。ダイエットと同じで、体重計で成果が分かるように、トレーニングの成果をデザイン思考テストで測ってくような感じですね。

 もう一つのVISITS formsは何かっていうと、社内でいろんな議論をしますよね。その中でさまざまな人が自分のクリエーティビティーを生かして、アイデアや意見を出してくる。特に最近はDXのような企業変革が求められているので、うちの会社はどんな世界を目指していくべきか、どんなサービスを出していくべきかなどいろんな議論がされています。

 そうしたときに、結局どの意見がいいのか、最終的にはどんな方向性にすべきなのかっていう意見の信頼性みたいなものをアルゴリズムで計算することによって、会社としてのビジョンを描いていけるようなツールを持っています。

 つまり個人の創造性を高めるところと、社内の創造性をいかに収集して整理し、会社の戦略に落として企業を成長させるかっていうところの2つのサービスを展開しています。