社会にどういう価値を与えたいか?
そのために自分はどうありたいか?

パネルディスカッションの風景

 アップデートできなければ、当然、活躍の場は減るでしょう。それをベースとした上で、学び続ける意思を社員が持てるような仕掛けだったり、そうした空気や文化づくりというものを、リクルートは意識してつくっています。

 例えば、主要媒体を雑誌からネットへ移行させるときも、「これまで雑誌でやってきたのに、ネットになってどのくらい売り上げが立つの?」など、事業内で侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がありました。

 でも「結局は顧客やクライアントの価値が大事だよね」となり、雑誌とネットのすみ分けや、融合の道を探るようになった。そのときに、ITの知識が圧倒的に足りなかったと自覚し、学んだ人たちの多くが、実際、今の社内で活躍しています。その経験があるので、アンラーニングやアップデートはとても大事だと理解しています。

 新しいネタをどんどん出してくる人の姿勢を見ていると、やはり自分も負けないようにインプットしてアイデアを生まなければならないと感じます。そのためには、その人と同じものを見ていてもダメです。社内でそういうカルチャーを生み出すために、組織の評価制度やトップの姿勢などを通じて、それに意味付けをしていくことが大事だと思います。

長内先生

長内 情報やアイデアをたくさん持つ際に、外からの情報にヒントがあるかと思います。それを集めるために、気を付けていること、意識していることはありますか。

宇野 私はとにかく外に出ていきますし、いろいろな人と話ができる場に行きます。こういう場に出させていただいているのも、その一環です(笑)。

四家 私もなるべく社外の人と食事するなど、あえて意識して外部の人たちと接触するようにしています。

長内 最後に、この不確実な時代に新規事業を始めようとしている人、または始めた人へ、何かメッセージをいただけますでしょうか。

宇野 もちろん時にはつらいこともありますが、新しいことをするのは本当にすごく楽しいし、自分が成長できるいい機会だと思います。ぜひ、諦めずに続けていただければ幸いです。

 新規事業だけではなく、新たな機能やサービスを加えるとか、自身の仕事の仕方を少し変えてみるとかも同じですが、何か新しいことをする前は、結構怖いものです。でも、実際にしてみると「なぜこれまで変えてこなかったのか」と思うことが多々あります。

パネルディスカッション

 そこは経験しないとわからないので、ぜひ、チャレンジするという機会を、ご自身、もしくは自分の部下にもつくっていただければと思います。それはきっと日本全体としても良い形へとなっていくでしょう。

 新規事業や既存の方法を変えるときは、仲間がすごく欲しくなります。会社の中でも外でも、同じ志の人がいることは、大きなモチベーションになったり、折れない心づくりをするためには、とても大事です。そうした同志を増やしていくことが、結果的に皆さんを助けることにもなると思います。

四家 「自分はどういう価値をこの社会で創造したいのか」。それを考えたとき、そのために「ありたい姿」というものがあるはずです。その筋が良ければ、途中で自分が困難になったとき、きっと応援者が出てきます。そうなれば、障害がいくつあっても乗り越えていけるでしょう。

 社会にどういう価値を与えたいか、そのために自分はどうありたいか。筋の良い、ありたい姿を描いていくのが一番だと思います。

長内 お三方のお話を聞いていて、「変わること」を楽しんでいらっしゃるような気がしました。まだまだ日本は変われるし、頑張っていける。そんな力をいただいた気がします。皆さん、本当にありがとうございました。

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