才能を伸ばすために
本当に必要な教育とは
では、本当の意味で子どもの才能を伸ばすには、どんな教育が必要なのか。
「まずは、一律一斉の指導からの脱却が重要だと考えます。いまの一般の大学入試制度では全教科の受験が必須のため、たとえば数学は大学教授に認められるレベルで秀でているのに、ほかの科目が足を引っ張って思い通りの大学に行けないケースもあります。また、AO入試で入学できても、卒業するためには不得意な科目の単位も必須となる。これでは、本当に才能がある人を見落としている可能性は高いでしょう。優れている科目があるなら、その科目の成績を重点的に見て評価することも必要ではないでしょうか」
加えて、幼少期のころから知的好奇心を大切に扱う姿勢や場作りが求められるという。中邑氏が運営する「LEARN」では、小学生を対象に「500円を持って4時間“家出”させる」「徹夜で虫探しの散策をさせる」といったプログラムを実践しているそう。一見すると型破りだが、実際に子どもの好奇心をうずかせているという。
「『時間があれば塾に行ったり勉強したりする』というのではなく、子どもが何に興味があるのかを尊重することが大切だと考えてます。僕が関わった子のなかには、15キロの粘土を使って自由に工作したいという子や、1時間ずっとマンホールを眺め続けているような子もいました。こうした力が必ずしも社会に還元されるかどうかはわかりませんが、これも突出した才能のひとつであることに変わりはない。人に強いられた学習では身にならないし、ただの指示待ち人間が育つだけでしょう。自分の力で好き勝手に突き進むうちに培われる力こそ、本物の才能になるのだと思います」
現在、政府主導の有識者会議では、この支援の対象となる「特別な才能を持つ子ども」の具体的な定義づけを見送っており、それだけ適切な指導法を模索している時期といえるだろう。子どもの才能と意欲を損なわずに、「実になる力」をつけるための指導が広がることを願いたい。