オーディション決勝で野性爆弾と戦うも30対0の大敗北で引退。その後、4年間のニート生活、7ヵ月の家電販売員生活を経て、25年来の幼なじみと起業。創業以来18年連続増収増益、年商140億円、Financial Timesが選定する「急成長企業未上場日本一」、ベストベンチャー100、経済産業省認定「地域未来牽引企業」などに選定された、スプリーブ(Suprieve)ホールディングスをご存じだろうか。社長は4年間、お笑い芸人として活動した森武司氏。
急成長の一因に、話題のベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』(木下勝寿著)の存在があったという。今回も同書の「やる気に頼らず楽しみながらできる」45法則のうち、森社長が「これは効いた」「とにかく沁みた」と大絶賛する10の法則をピックアップして紹介。5回目は、元芸人の僕が「人が辞めない派遣会社」をつくれたワケに迫ろう。構成:橋本淳司)

元お笑い芸人の僕が「人が辞めない派遣会社」をつくれたワケ

めんどうくさいことを見つけると、
「絶対に他の人はやらないだろう!」と嬉しくなる

森武司(以下、森):僕は『時間最短化、成果最大化の法則』で紹介されている「めんどうくさければGOの法則」がめちゃくちゃ好きなんです。

――絶対に成功できる唯一の方法は「他人にはできないこと」をやること。

「他人にはできないこと」というと「難しいこと」と思うかもしれないが、もう一つは「めんどうくさいこと」というやつですね。

森:僕はめんどうくさいことを見つけると、「絶対に他の人はやらないだろう!」と嬉しくなる。

 自分がめんどうくさいと思ったことは、たいてい他人にもめんどうくさいので。

 反対にラクでカッコいい仕事を「やりたい」と思うことはあっても、かなりライバルが多いので踏み込みません。

めんどうくさくて
大手が参入しない事業に目をつける

――カッコいい仕事はレッドオーシャンということですか?

森:そう。だからこそ、僕らが参入するのは大手企業が嫌がる「めんどうくさい」市場です。

 僕が最初に始めたカップリングパーティ事業もそうでした。

 当時の街コンは冷めた料理を紙皿で出すのが主流でしたが、おもいきって貸切レストランに男女100人を集める大規模イベントを企画しました。

 お酒を飲むのでトラブルが発生することもあるし、時には男女間のもつれのフォローなど、めんどうくさいことが多いのですが、単価は安い。

――だから大手は参入してこないというわけですか。

森:そうです。だからこそSNS黎明期に『mixi』のコミュニティを30万人超が登録するモンスターチャンネルへ成長させることができました。

 今はマッチングアプリがありますが、当時のカップリングパーティ事業には大手は1社もいませんでした。

 めんどうくさくて大手が参入しない事業にこそ、ビジネスチャンスがあるんです。

「人が辞めない派遣会社」は
どのように誕生したか

――他にも「めんどうくささ」に着目した事業はありますか?

森:派遣会社をつくったのは「人が辞めない派遣会社をつくれないか」と知人から相談を受けたのがきっかけでした。

 当時、人をモノのように使い捨てにするのが嫌でした。

 大手派遣会社のほとんどは登録型派遣ですが、正社員派遣(正社員として雇用後にクライアントに派遣する)であれば、「人が辞めない派遣会社」ができます。

――でも、人が辞めない派遣会社には雇用に関するリスクがありそうです。

森:そうなんです。正社員派遣の場合、仕事がなくても社員に給料を払い続けなくてはなりません。

 このリスクに備えるのが、めんどうくさい部分ですが、対応できれば「人が辞めない派遣会社」ができます。

――どんなふうに備えるのですか?

森:まず、どうしたらいいかを徹底的にヒアリングしました。

 結果、見えてきたことが2つあります。

 一つはクライアント企業との関係性を強化すること。

 登録型派遣会社でも、関係性が良好であれば切られることが少ないとわかりました。

 もう一つは派遣先の数です。

 登録型派遣の場合、派遣先が20社程度あればやっていけますが、そこを100社と契約しようと考えました。100社全部が「人がいらない」という状況は起こりにくいからです。

――派遣先との関係はどのように良好にするんですか?

森:よい人材を派遣するということに尽きます。

 正社員派遣ですから従業員に対しビジネスマナーなどの教育も行います。

 しっかり勤務したらボーナスが出ますし役職も上がっていきます。

 するとモチベーション高く働いているうちのスタッフが、派遣先の店舗でリーダーなど、重要な役割を担うようになりました。

――派遣先を増やすほうはどうですか?

森:同業種の派遣先を複数持つことです。

「同業種1社」が慣例ですが、同業他社とも契約することを認めてもらえるよう粘り強く交渉しました。

「僕らは正社員派遣なので1000人の雇用を守らなくてはなりません。

 御社が雇用を止めないと約束してくれないのであれば、同業他社との契約を認めてください」と。首を縦に振ってもらうまでに4年かかりましたけど。

――4年ですか! ずいぶんと粘りましたね。

森:今では派遣しているスタッフが信用を得ていく中で、うちを使わない選択肢はないという感じになってきました。

 人が辞めない派遣会社は、従業員満足度も高いですし、クライアントの満足度も高い。

 いい対応を受けられる顧客満足度も高くなります。

 派遣している社員の数も増えていくと、それなりに影響力も上がっていきました。

――めんどうなことをやった結果ですね。

森:たしかに、その間の交渉は「めんどうなこと」ではありました。

 でも、他社がやらない部分を探して、そこをやれば勝てるんです。

 多くの人は「やりたいこと」や「やれること」ばかりやりがち。

 やるべきだけど、誰もやらないめんどうくさいことをやれば、誰でも一人勝ちできるのだと思います。

 『時間最短化・成果最大化の法則』は共感するところが多く、新入社員や若い人たちからベテラン社員、社長まであらゆる人たちに読んでほしいです。

 とくに、「めんどうくさければGOの法則」をこのタイミングで熟読しておくと、今後の伸びが劇的に変わってきます。極めて重要な法則ですので、本書で詳しく学んでみてください

【著者プロフィール】
森 武司(Takeshi Mori)
スプリーブ(Suprieve)ホールディングス代表取締役CEO
Financial Times「急成長企業 未上場 日本一」
「ベストベンチャー100」受賞
経済産業省認定「地域未来牽引企業」
創業以来18年連続増収増益
1977年大阪生まれ。高校卒業後、NSC吉本総合芸能学院入学。4年間お笑い芸人として活動しオーディション決勝で野性爆弾と戦うも30対0の大敗北で引退。ショックを受け、そのまま4年間ニートとなる。長期間のニート生活から就職が難航。苦難の末に入った家電量販店で販売員をするも7ヵ月で退職。それを機に幼稚園から小中高と幼なじみで25年来の友人を誘い起業(わくわくエッサ有限会社)。金なし、コネなし、高卒、4年間ニート生活など、いわゆる社会的弱者ながらゼロから起業(2005年)。現在、13事業で年商140億円まで伸ばしている。採用基準に“友達になれそうな人”を掲げ、新卒社員を1年で1000名採用。化粧品、人材派遣、広告代理店、美容、ART、YouTubeなど関連のない13事業すべてを黒字化するまで育てるマーケティング戦略に注目が集まっている。何も持たない負け組でも、25年来の仲間と起業して成功できる“仲間力アップマニュアル”を再現性のある形で確立。幼稚園から40年来の友達が役員。