思いやりのベースは愛他主義

 第二の、「思いやり」とは、部下やお客さまに対して持つ思いやりです。社会に定着してきた、クラウドファンディングという寄付募集の場面を想像してみてください。「自分が得するために」というのでは、人の共感は得られません。一方、「困っている誰かのために」「社会の問題解決のために」との訴えなら共感や感銘を得やすく、寄付も集まります。

 このベースになるのは、前回解説した「愛他主義」です。損得抜きの愛情、慈しみですね。部下に話をするときは、「なぜなら、あなたにこうなって欲しいから」「お客さまには、こんな価値を差し上げたいから」と話します。また相手への配慮として、「私もこのようにサポートする」「困れば、いつでも相談に乗る」「どうしても難しければ、一緒に別の方法を考えよう」などの言葉を添えて伝えます。

「他者への思いやり」は、人を動かす立場の上司が必ず持っておくべきもの。職位によらない影響力であり、リーダーシップの源泉です。

PREP法でストーリーを語る

 第三の「分かりやすさ」は、話し方の構成や流れです。 どんなに良い内容の話でも、分かりやすくなければ伝わりにくいものです。ことに上司には、言葉で部下を動かすことが求められますから、分かりやすい話し方は必須のスキルです。その基本は、起承転結を意識してストーリー性を持って伝えることです。あれもこれもと内容を詰め込みすぎず、話があちこちに飛んだりすることなく、伝えたい内容を簡潔に整理して語ることです。

 使いやすい方法として私がお薦めするのが、「PREP法」です。これは、P=Point(結論)、R=Reason(理由)、E=Example(事例、具体例)、P=Point(結論を繰り返す)の順番で、相手にメッセージを伝えるものです。例示してみましょう。

P=Point(結論)「○○さんの、この改善提案は、とても素晴らしいですね!」
R=Reason(理由)「なぜなら、お客様にも社員たちにも、とてもプラスになるからです。」
E=Example(事例、具体例)「先日も、あるお客様が仕事の効率が数倍アップしたと喜んでおられました。また、社員たちにとっては今までより安全に取り組めると高評価です。」
P=Point(結論を繰り返す)「ですから、この改善提案は、とても素晴らしいと思います!」

 上司の皆さんは、ミーティングなどで部下に対し、仕事の成果を評価したり、新たな方針を説明する機会が多々あることでしょう。そうした場面で、PREP法で話を組み立て語ってみてはいかがでしょうか。