ジャニーズ事務所事件
反省すべきは「報道」だけではない
自分がされた行為は、性暴力だったのかもしれない。少なくとも、自分はそのときに違和感があった――。
最近相次ぐ性虐待や性暴力、あるいはセクシュアルハラスメントのニュースを見て、そう考える人は少なくないのではないか。
特に故・ジャニー喜多川氏による10代の少年たちへの性虐待を報じるニュースのコメント欄では、男性が子ども時代など過去にあったことを振り返り、性被害だったかもしれないとつづる様子も見られた。
文科省は、児童を性暴力の加害者にも被害者にもしないための教育として、2020年から試験的に「生命(いのち)の安全教育」を実施している。性教育を忌避してきた日本で、ようやくこのような動きがあったことからもわかる通り、ここ数年での、性犯罪・性暴力に関する社会の認識の変化は著しい。
その中でも「男性の性被害」については、今、大きな注目を集めている。そしてこれは性的同意に関わる話でもある。
ジャニーズ事務所については、過去に民事訴訟でジャニー喜多川氏による性虐待の事実が認められていたにもかかわらず、週刊文春以外のメディアが黙殺し、同事務所のタレントを重用し続けてきた事実がある。
この背景には国内随一と言っていいであろうタレント事務所への「忖度(そんたく)」があったと考えるのが自然だろう。
5月11日に放送されたTBSの報道番組「news23」では、小川彩佳アナウンサーが「果たして報道機関がどれだけ、こうした被害を報道してきたのか。少なくとも私たちの番組ではお伝えしてこなかった現状があります」と反省の言葉を口にし、これは「異例の自己批判」と報道された。
しかし、反省すべきは報道番組だけであるとは思えない。