PBR1倍割れの代表銘柄ともいえる本邦メガバンク。日本銀行の金融政策の変更期待から一時、株価が上昇したが、米国の地方銀行破綻で暗雲が垂れ込める。特集『激安株を狙え』(全13回)の#9では、メガバンク3行の決算会見でのトップの発言を振り返り、元日銀審議委員による米国経済の解説を踏まえて、今、買うべきか否かを検証した。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
米国で今後も続きそうな地銀破綻
日銀の金融政策はいつ、どう変わる?
バブル崩壊から不良債権処理、公的資金の注入を経て統合を繰り返し、日本の大手銀行は3メガバンクとその他に集約された。
波乱と犠牲の歴史を経て、各社は2023年3月期、過去最高益か、それに近い水準の最終利益を計上。米国の大手投資銀行が22年以降、減収減益でリストラに走るのに対し、邦銀大手は相対的に強固な収益力を見せている。
とはいえ、株価はさえない。目下話題のPBR(株価純資産倍率)は0.5~0.6倍台で、1倍を大きく割り込んでいる。今後の収益力を期待されていないとも、図体が大き過ぎるとも取れるが、そんな日本の“激安株”の代表格ともいえる銀行株が、ついに「買い時」になったとの期待が高まった。
「異次元の金融緩和」を10年間続けてきた日本銀行の総裁が、黒田東彦氏から植田和男氏に交代すると2月に報じられた。4月に就任して以降、金融政策の修正には至っていないが、今後、イールドカーブ・コントロール(YCC)やマイナス金利など、国債市場をゆがませ、銀行の収益を押し下げてきた“副作用”が解消されるとの見通しが有力だ。
日銀によって押さえ付けられてきた金利が日本でも上昇に転じれば、貸し出しの金利によって預金との利ざやを稼ぐという、銀行本来の収益を拡大できる時代がやって来るとみられている。
そんな楽観論に冷水を浴びせたのが、3月のクレディ・スイス・グループの救済合併と、米シリコンバレーバンクなど地方銀行の経営破綻といった海外発の問題だ。
昨年末以降、じわり上昇していた日本のメガバンクの株価は、これらを受けて急落。米国のインフレはなお続いており、急激な利上げの副作用もまたくすぶり続けている。
日本経済は、電気代の高騰など物価高が国民生活を圧迫しつつも、日経平均株価が5月に3万円を超えるなど、期待と不安が入り交じる状況だ。
果たして日本の銀行株は買いなのか――。各社の決算会見での経営トップの発言と、今後の成長と株主還元に向けた戦略を分析。そして、元日銀審議委員による、世界経済の今後と日本の金融政策の見通しへの見解を踏まえて、銀行株を買うべきか否かを検証する。